artscapeレビュー
カタログ&ブックス | 2022年7月1日号[テーマ:アーティスト/作曲家・池田亮司の先鋭性を再発見する5冊]
2022年07月01日号
注目の展覧会を訪れる前後にぜひ読みたい、鑑賞体験をより掘り下げ、新たな角度からの示唆を与えてくれる関連書籍やカタログを、artscape編集部が紹介します。
2009年以来の大規模個展が弘前れんが倉庫美術館で開催(2022年4-8月)されるなど、アーティスト/作曲家として近年も活躍を続けている池田亮司(1966-)。研ぎ澄まされた光と音の作品は、観る者をたびたび圧倒してくれます。ダムタイプとして活動した時代から現在に至るまで、池田の作家性を再び見つめ直す5冊を紹介します。
今月のテーマ:
アーティスト/作曲家・池田亮司の先鋭性を再発見する5冊
1冊目: +/−〈the infinite between 0 and 1〉
Point
東京都現代美術館で開催された、2009年の初の大規模個展の図録として編集された本書。人間の知覚を「データ」として捉え直し、鑑賞者の眼と耳に根源的に働きかける池田のインスタレーション作品を通した探求は、現在に至るまで一貫して続いていることが再確認できます。
2冊目:ダムタイプ 1984 2019
Point
京都市立芸術大学の学生を中心に、1984年ごろから活動したアーティスト・コレクティヴ「ダムタイプ」。池田もその一員として、ビジュアル/テクニカルの両側面からグループのアイデンティティを形成してきたことは、池田の活動初期を語る上でも重要な要素です。ダムタイプの活動を総覧できる、保存版ともいえる一冊。
3冊目:美学のプラクティス
Point
「美学とは何か?」という大きな問いへの考察を重ねる、気鋭の哲学者/美学者・星野太による論集。「感性的対象としての数」の項で、宮島達男作品などとともに池田亮司に関する言及も。これらを具体例に語られる、美学においての「美と崇高」の概念は、ほかの作家の作品を観る際にもきっと生かされるはず。
4冊目:フラッター・エコー 音の中に生きる
Point
英国における現代音楽の巨匠であり、批評家でもあるデイヴィッド・トゥープ(1949-)によって2017年に刊行された自伝。アンビエントやエレクトロニカなど、多岐にわたる音楽ジャンルの年代記としても読め、日本人アーティストとの共作もたびたび行なってきた著者独自の視点で池田亮司の音楽性にも触れています。
5冊目:パンデミック日記
Point
文芸誌『新潮』に掲載された、小説家や劇作家、ミュージシャンなど各界の文化人たち総勢52名による2020年の1年間のリレー日記。そのなかで池田亮司も身の回りのことを綴っています。個々人での世相の見方が鮮明に体感できる一冊。いまや日常となったパンデミックが鮮烈に生活を左右していた頃がもはや懐かしい。
池田亮司展
会期:2022年4月16日(土)~8月28日(日)
会場:弘前れんが倉庫美術館(青森県弘前市吉野町2-1)
公式サイト:https://www.hirosaki-moca.jp/exhibitions/ryoji-ikeda/
池田亮司展 展覧会ブックレット
「池田亮司展」の解説や展示風景写真を収録した展覧会ガイドブック(日英バイリンガル)。インディペンデント・キュレーター吉竹美香氏による論考のほか、キュレーター/ライターのバーバラ・ロンドン氏による作家へのインタビューを掲載。
◎展示会場隣接のショップ、オンラインストアで予約受付中。
2022/07/01(金)(artscape編集部)