2022年09月15日号
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artscapeレビュー

抗走の系譜 The Yagi Family: Rebels Against Convention

2022年07月01日号

会期:2022/05/20~2022/06/04

中長小西[東京都]

中長小西で開催されていた「抗走の系譜 The Yagi Family: Rebels Against Convention」は、前衛陶芸家の八木一夫、その父である一艸、弟である純夫、妻である高木敏子、息子の明と正の作品による展覧会だ。行く前にウェブサイトで開廊情報を確認しようとしたら、写真などのメインビジュアルはなく、以下の文字だけが載っていた。強烈だった。


八木一艸(1894-1973)
八木一夫(1918-1979)
八木純夫(1921-1944)
高木敏子(1924-1987)
八木 明(1955-)
八木 正(1956-1983)


没年を見て愕然とする。明以外はみな故人だ。立て続けの出来事。明からしたら、戦時下で叔父以外、1973年から87年にかけてみな亡くなったということが伝えられる。展覧会のキャプションには、過去の文献から、純夫の才能について言及する一夫の様子、一艸と一夫の二人展などについて触れられているが、たったいまの言葉としてあるのは明のものだ。作品とインタビュー記事と先行の研究成果と明の言葉が端的に示されるなかで、圧倒的に明の言葉が生々しい。それを押してなんとか作品を見なければと思いながら、会場をくるくる回る。本展で扱われているのは、社会や自身が慣習化してきたものを批判し創造していく一夫の「抗争」が、それぞれの芸術領域や社会での実践だけでなく、家族間にも見出せるのかという問い。その一方で、敏子の染織作品が壁に斜め掛けされることで2.5次元となることは正に、そのユニット性は明に引き継がれたのだろうかといったことを思いながら、ふと思い至る。一艸の妻である松江はどのように彼らを見て生きたのだろうか。例えば、すでに八木家の蔵書に関しても、松江が購入したとみられる書籍についても調査は進んでいるようだ。展覧会は無限の世界をくぎる装置であり、本展の「芸術一家」は見事に機能している。そこから飛躍して、松江からの視点もまたどこまでも抗争的かもしれないと妄想して帰路に就いた。



★──孫引きで申し訳ないが、以下を参考のこと(高田瑠美「八木家所蔵書籍について」:大長智広・島崎慶子・花里麻理・高田瑠美[調査・編集・発行]『八木家所蔵八木一艸関連資料調査報告書』、2020)。
筆者が参照したのは以下の論考。
花里麻理「知られざる八木和夫──一九六〇年代中ごろのスナップショットについて」(『茨城県陶芸美術館研究紀要1』茨城県陶芸美術館、2021、pp.32-49)



公式サイト:http://www.nakachokonishi.com/jp/exhibitions/yagi2022/yagi2022.html

2022/06/01(水)(きりとりめでる)

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