artscapeレビュー
吉野辰海 展
2009年08月01日号
会期:2009/06/15~2009/06/27
Gallery58[東京都]
美術家・吉野辰海の個展。近年はブロンズなどの硬質な素材によって捩れた犬などを表現していたが、今回の作品で作風が一転した。「SCREW」と名づけられた新作は、犬の頭部にはちがいないものの、正面はむしろ象の頭部で、両者が融合した特異な形態になっている。巨大な頭部を支えているのは少女のような華奢な裸体だが、これもわき腹や性器を見ると、少女というよりむしろ老婆のような印象すら覚える。そして何よりもこれまでの吉野の作品に見られなかった特徴が、けばけばしいほどの色彩だ。象=犬の頭部はピンクや青に塗られ、大きく開けられた犬の口は真っ赤に彩られている。円熟期を迎えてのポップへの転向宣言というべきか、あるいはモードこそちがえど、そもそも最初からポップだったというべきか。次回の展開が待ち遠しい。
2009/06/25(木)(福住廉)