artscapeレビュー

手塚夏子『人間ラジオ2』

2009年08月01日号

会期:2009/07/25~2009/07/26

die pratze[東京都]

超難解、なのに見続けてしまう。手塚夏子が主催する「実験ユニット」の第3弾、音楽家・スズキクリとの即興公演。「チューニングを調整する、その調整することそのものの中に異様にダンスを感じる。音楽を感じる」(プログラムより)のがテーマ。「チューニング」とは外のものと自分との関係を意識することらしい。確かに、椅子が2脚あるだけのきわめてシンプルな舞台で、座ったり歩いたりする手塚の身体は、表現するというより感じる身体に映る。シンプルな動きのなかに微細な切断が含まれている気がする。「切断」に見えるところに「チューニング」の作業がなされているようだ。ただし「チューニング」といっても合わせることが目標ではい。むしろ「調整する」作業それ自体が舞台の時間をつくる。「あれかな?」「これかな?」と、スズキクリも幾台かの小型ラジオを抱えて何度も置き直す。「超難解」さは、2人が何をどう調整しようとしているのか判然としないところに原因がある。いま「あれかな?」「これかな?」と書いてみたけれど、そこでの「あれ」や「これ」が何なのかが見る者に理解が及ばないのである。しかし、それにもかかわらず、見る者は放って置けず、見ないことができない。こうした手塚の「身体とは一体何者なのか?」という問いは、身体を「キャラ化」して自己の媒体としか受けとめようとしない今日的身体観の主潮流と対比すれば絶対に劣勢なのだけれど、そうであるだけにとても貴重で、今後、見過ごされた身体を丁寧に反省しようとの気運が盛り上がったときには重要になってくる仕事となるだろう。

2009/07/25(土)(木村覚)

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