artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
《OM TERRACE》
[埼玉県]
仙台から埼玉へ移動する。同日に2都市間で演劇をハシゴするのはさすがに初めてだが、大宮駅東口に藤村龍至の《OM TERRACE》が完成していたので立ち寄る。場所は本当に駅前だった。トイレ以外の屋内空間がない1階と屋上だけの屋外施設であるにもかかわらず、エレベータも設置し、かなり空間に余裕をもった公共施設だった。ベンチ(ゆえに、排除型にならない)やサインも建築化し、確かに階段やテラスで人々がくつろいでいた。
2017/07/08(土)(五十嵐太郎)
マームとジプシー10th Anniversary Tour クラゲノココロ モモノパノラマ ヒダリメノヒダ
会期:2017/07/07~2017/07/30
彩の国さいたま芸術劇場 小ホール[埼玉県]
藤田貴大の高校時代を描いた過去の3作品をリミックスした構成であり、舞台空間も奥行き方向に三分割されている。したがって、物語としての一貫性よりも、めくるめく舞台転換と散りばめられた多様な要素が複雑に重合する演劇だった。それは視覚と記憶をめぐる断片が反響し合う時空の体験に身を委ねるものでもあった。
2017/07/08(土)(五十嵐太郎)
ロジェ×束芋
会期:2017/07/05~2017/07/06
浜離宮朝日ホール[東京都]
フランスの印象主義音楽+吉松隆を弾く背景で、束芋らしいアニメーションが投影される。手描きをベースにしたややおどろおどろしい映像ゆえに、2人の世界の相性がよいというよりも、むしろ不思議な東西の組み合わせと言うべきか。またプロジェクションされた大きな映像の効果を際立たせるために、クラシックの演奏会ではありえない暗闇に近い状態で音楽を体験したのが印象的だった。
2017/07/06(木)(五十嵐太郎)
《あべのハルカス》
[大阪府]
《あべのハルカス》へ。日本は都市計画とランドマークが連動せず、なかなか眺めるための引きがとれないのだが、隣の広場「てんしば」からだと、《あべのハルカス》の外観がよく見える。内部に入ると、JCDデザインアワード2017で銀賞となった「BAKE CHEESE TART」の店舗もある。そして初めて展望台に登った。透明感あふれる開放的な空間である。ただし、建築土産を探したら、ミニチュアがほとんどないのが残念だった。代わりに、《あべのハルカス》のゆるキャラ、「あべのべあ」のグッズばかりで、これがアイコン建築として弱いことをうかがわせる。
2017/07/05(水)(五十嵐太郎)
JCDデザインアワード2017 2次審査
会期:2017/07/01
東京デザインセンターガレリアホール[東京都]
JCDデザインアワード2017の審査員を務めた。今回はあまり票が割れず、最後の投票は中村竜治の《JINS 京都 寺町通店》と、若手の百枝優による《丘の礼拝堂》の建築対決になった。時間と変化を取り込む、かなりひねた新築らしからぬデザインvs教会の建築史に接続しようとする新しい幾何学的な天井の違うタイプだが、結果は前者の圧勝である。ともあれ、21世紀以降の傾向だが、今年もインテリアデザインのアワードにおいて建築家が上位に食い込んだ。中村は3度目の大賞である。なお、五十嵐の個人賞としては、《黄金町バザール》を契機に誕生した柿木佑介+廣岡周平による斜めの壁を挿入したギャラリー、《黄金町の切込》を選んだ。このプロジェクトは森田恭通、香港のHorace Panからも個人賞に選ばれ、トリプルでの受賞、ならびに新人賞となった。金賞は逃したが、思いの強い3票を集めたわけである。ちなみに、「JCDデザインアワード2017」では、銀賞かつ新人賞で、五十嵐研出身の伊藤周平が、竹中工務店で担当した《女神の森セントラルガーデン》も入賞した。
2017/07/01(土)(五十嵐太郎)