artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

オーチャード・ロード

[シンガポール]

オーチャード・ロードへ。ど派手な《アイオン・オーチャード》を見ても、もう驚かなくなっている。向かいが黒川紀章の《ウィーロック・プレイス》。世界展開した彼の後期、アブストラクト・シンボリズムのトレードマークになった円錐形が効いている。ここから東南の奥に歩いて行くと、なんとシンガポールではめずらしいひっそりとした戸建の住宅街だった。

写真:上2枚=アイオン・オーチャード、下2枚=《ウィーロック・プレイス》

2017/06/13(火)(五十嵐太郎)

ナショナル・ギャラリー・シンガポール

[シンガポール]

ナショナル・ギャラリーは、1930年代の旧最高裁判所と20年代の旧市庁舎をガラスの大屋根でつなぎ、地下から各展示にアクセスする巨大施設だった。草間彌生展では列柱にもドットの装飾をつけ、同時にチルドレンズ・ビエンナーレを開催していたことから、チケット売り場からものすごい行列が続く。しかし、歴史を振り返る常設展示のエリアは閑古鳥で、これは日本と同じ状況である。じつは常設の内容がとても充実しており、旧市庁舎側はシンガポール、旧最高裁側は東南アジアの近現代美術史を時代背景を踏まえて丁寧に紹介し、体系立てて整理していた。特に後者はインドネシア、フィリピン、ベトナム、カンボジアなど、他国の前衛芸術運動にも焦点を当て、シンガポール主導で東南アジアの近現代美術史をまとめるぞ、という気合を感じる。

写真:左上=ナショナル・ギャラリー模型 右上から=旧最高裁判所、シンガポールの現代美術、草間彌生展

2017/06/12(月)(五十嵐太郎)

チャイナタウン、Lighting Planners Associatesシンガポールオフィス

[シンガポール]

シンガポールのチャイナタウンは、保存エリアに指定されており、周辺の高層化とは対照的に、ショップハウスと宗教施設がよく残る。その一角にある、面出薫が率いるLPAの事務所を訪問した。21世紀に入り、LPAは国立の施設群、新しい名所や商業施設、街区の照明計画など、シンガポールのほとんど主要な施設の夜景を創出している。

写真:右下=LPAの事務所が入るショップハウス群

2017/06/12(月)(五十嵐太郎)

サラダ・ドレッシング(salad Dressing)事務所訪問

[シンガポール]

モダンなデザインの競馬場を商業施設にリノベーションしたザ・グランドスタンドへ。最上部は観客席に向かって大きく庇を張り出す。最上階にあるランドスケープの事務所「サラダ・ドレッシング」を訪問した。多様な植物の育ち方や水質浄化の実験を行ないつつ、生態系から考えるプロジェクトを世界各地で進行している。

2017/06/12(月)(五十嵐太郎)

シンガポール建築群

[シンガポール]

都心に戻り、ピナクル・アット・ダクストン、オアシア・ホテル、マックスウェルチェンバーズ、東京海上のビルなどを見る。これらは前に訪れたときにはなかった建築群である。伊東豊雄が手がけた《キャピタ・グリーン》は赤い冠をいだく緑化ガラス建築で、地上のくねくねした部分はオラファー・エリアソンの作品だった。容積率の緩和が受けられるボーナス制度によって、多くのビルがパブリックアートを導入している。KPFによるビルは建設中で、仮囲いには世界的な建築事務所! のプロジェクト! と、大々的に宣伝していた。そこまで自慢して商品になる固有名なのか? という違和感もあるが、リベスキンドのコンドミニアムのときは、彼がピアノを演奏する販促のためのテレビ・コマーシャルもあったらしい。いやはや建築家はスター扱いである。

写真:左上2枚《キャピタ・グリーン》 左下=オラファー・エリアソンの作品 右上から=ピナクル・アット・ダクストン、オアシア・ホテル、東京海上のビル

2017/06/12(月)(五十嵐太郎)