artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
《春日大社国宝殿》
[奈良県]
天理から奈良に移動し、谷口吉郎による旧宝物殿を増改築した白い《春日大社国宝殿》へ。さすが隈研吾の事務所で《根津美術館》などを手がけた弥田俊男の監修だけにキレイである。内外でルーバーが活躍し、天井の照明もその隙間に巧みに埋め込む。このタイプの和を感じさせるデザインの手法は発明よりも、洗練の領域に達している。1階の導入部では、この手の施設にはめずらしく、メディア・アート的なインスタレーションをもうけていた。
写真:上3枚=《春日大社国宝殿》 左下=《春日大社》 右下=《春日大社国宝殿》内部のインスタレーション
2017/07/23(日)(五十嵐太郎)
1000年忌特別展「源信 地獄・極楽への扉」
会期:2017/07/15~2017/09/03
奈良国立博物館[奈良県]
「往生要集」などを通じて死後の世界のイメージに影響を与えた比叡山の僧・源信にちなむ、絵画と彫刻を展示する企画だ。聖衆来迎寺六道絵をはじめとする地獄図が生き生きと描かれ、アーティストを触発したことがうかがえる。ただ、極楽図の方は、平穏過ぎて、どうしてもやや単調になってしまう。地下通路を経由して、なら仏像館へ。これだけ大量に仏像を一堂に並べると、時代ごとの造形の違いが実物で勉強できる。確かに、飛鳥/奈良時代だと顔が違う。われわれが一般にイメージする仏像の顔はそれより後のものである。ただし、ここのリノベーション、真上に顔を向けないと、ほとんどオリジナルの天井が隠れてしまうのは残念だ。
写真:上=《なら仏像館》 下=《奈良国立博物館》
2017/07/23(日)(五十嵐太郎)
《佐賀県立博物館》《市村記念体育館》《佐賀県立図書館》
[佐賀県]
佐賀にて、第一工房+内田祥哉による《佐賀県立博物館》と、坂倉準三による《市村記念体育館》へ。いずれもオブジェのような造形の外観だが、前回に佐賀を訪問したときは、内部までは見ることができなかった建築である。説明責任や社会性、あるいはコミュニティなどの前口上がなくても、カタチ一発で勝負できた時代の力強いデザインに惚れ惚れする。隣に連結する美術館も、博物館をリスペクトしたデザインだった。また第一工房+内田祥哉の《佐賀県立図書館》は、前日に見た《武雄市図書館》と比べると、ザ図書館というべき古いタイプの公共建築である。ただ、せっかく気持ちがよさそうなカフェがあるのに、肝心の祝日は休みなのが残念。内部も確かに《武雄市図書館》の方が涼しく過ごせそうなのだけど、蔵書はちゃんとしており、本来の図書館としてはこうあるべき姿を示す。
写真:左=《佐賀県立博物館》 右上2枚=《市村記念体育館》 右下2枚=《佐賀県立美術館》と《佐賀県立図書館》
2017/07/17(月)(五十嵐太郎)
《わいわいコンテナ2》
[佐賀県]
西村浩が関わる《わいわいコンテナ2》へ。店舗やシェアオフィスのほかが入る、実験的なプロジェクトだが、こちらも祝日はカフェがあいにくの休みで、アクティビティは確認できなかった。が、なるほど現地を訪れると、周囲はあちこちにコインパーキングが点在し、街並みが虫食い状になっていることがわかる。これに一矢報いるのが、わいわいコンテナのそもそもの始まりだった。なお、すぐ背後に昭和を色濃く残す屋内マーケットが残っていて、これがなんとも趣深い空間だった。
2017/07/17(月)(五十嵐太郎)
《長崎港ターミナルビル》
[長崎県]
長崎へ移動する。日本建築大賞の審査で長崎県立美術館を訪れて以来だから、10年ぶりくらいだろうか。海沿いでは、高松伸によるアイコン建築というべき《長崎港ターミナルビル》、北川原温やマイケル・ロトンディによる倉庫が並ぶが、隣接するyou meタウンの方が圧倒的なヴォリュームで、面白くもないデザインの巨大な商業施設が、これらのポストモダン建築を隠しているのは、なんとも皮肉な風景のように思われた。
写真:上2枚=《長崎港ターミナルビル》 左下=北川原温による倉庫 右下=マイケル・ロトンディによる倉庫とyou meタウン
2017/07/17(月)(五十嵐太郎)