artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
TAPAS. Spanish Design For Foodほか
バルセロナ・デザイン博物館[スペイン]
日本でも巡回していたらしいタパス展は、食に関するデザインがいろいろと並ぶ。ワイナリーの建築群も紹介する。常設は現代のプロダクト、近代以前の装飾、ポスターグラフィックなどのセクションが各階ごとにあるが、ずば抜けてファッションの歴史展示が素晴らしい。時代ごとのファッションの変遷を、身体のどの部分を強調・誇張するものかをワンポイントで明快に示す。ほかのフロアとあまりにレベルが違うキレのよさに舌をまく。
写真:左上から=バルセロナ・デザイン博物館、常設展 現代のプロダクト、近代以前の装飾、ポスターグラフィック、右上=タパス展、右中・右下=ファッションの歴史展示
2017/04/01(土)(五十嵐太郎)
フェルミン・バスケス《エンカンツ蚤の市》ほか
[スペイン]
エンカンツの蚤の市へ。前に来たとき閉まっていたが、これは絶対に多くの人で賑わう開催日に見るべき空間だ。店舗を配したスロープがスパイラル状に続き、その上に高く大屋根を架ける。天井がランダムに傾く鏡面仕上げで、見上げると雑踏や周囲の風景が混ざり、ダイナミックさを増幅する。ある意味でこの乱暴さは、卒計に出てきそうな案だが、現実の建築ゆえに、周囲にはデザイン博物館、モネオの《ラウディトリ》、ボフィルの《カタルーニャ国立劇場》、エンカンツの蚤の市などの現代建築群が並び、それらとの相乗効果が起きている。
写真:左・右上=《エンカンツ蚤の市》 右下=《カタルーニャ国立劇場》
2017/04/01(土)(五十嵐太郎)
アントニ・ガウディ《カサ・ミラ》《カサ・バトリョ》
[スペイン]
ガウディの《カサ・ミラ》へ。人工的な丘を散歩するような屋上の楽しさはハンパない。居室はこれだけ広いと、変則プランで使いにくいといった些細なことは、気にならないだろう。何よりも中庭ほか外気に触れる部分が多く、ガラスを通じて採光し、その明るさに、壁構造から脱却したモダンの精神を感じる。《サグラダ・ファミリア》よりも、空間の体験が面白い。続いて、伊東豊雄のガウディへのオマージュと言うべき仮面のホテルを過ぎて、《カサ・バトリョ》へ。これは大小さまざまな開口にいろんな仕掛けがあって興味深い。カテナリー曲線はここでも多用されている。ガウディの建築はどれも入場料が高いが、おそらく値下げするともっと行列が長くなるのだろう。観光客も非日常のテーマパーク的に空間を受容している。
写真:左=《カサ・ミラ》 右上=伊東豊雄《スイーツアベニュー》 右中・右下=《カサ・バトリョ》
2017/03/31(金)(五十嵐太郎)
ドメネク・イ・モンタネール《アントニ・タピエス美術館》
[スペイン]
出版社を改修した《アントニ・タピエス美術館》へ。ドメネク・モンタネールによる装飾的なファサードだが、内部に入り階段を降りると、天井からの採光のある、細い鉄の柱が林立する白い大空間の吹抜けに息を飲む。上部は蔵書室だ。企画展は、大量の絵葉書で4面の壁を覆うインスタレーションだった。地下では、タピエスに関連したコレクション展を開催していた。
2017/03/30(金)(五十嵐太郎)
《ニノト市場》
[スペイン]
マテオ・アルキテクトゥラによるリノベーションは、壁はあまり触らず、新しいアイデンティティとして特徴的な屋根を与えたミラージェスの《サンタ・カタリーナ市場》とは逆の手法だった。もとの三角屋根群を残しながら、古い壁を抜いて明るい大空間とし、店舗も整然とした配置であり、地下にスーパーマーケットを入れる。
2017/03/30(金)(五十嵐太郎)