artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

このはなアリーナ

[静岡県]

竣工:2015年

静岡にて、内藤廣が設計した《このはなアリーナ》を見学する。下部のRC造は、外から盛り土でほぼ隠され、威圧感を減じている。その上に免震層とRCの大きなリングをはさみ、15mの集成材×256本が斜めに立ち上がる。さらに頂部は鉄骨トラスになったハイブリッド構造の力作だ。体育館だが、外部に閉じることなく、エントランスのレベルはガラスで囲まれており、まわりの街並みが見える開放的な空間をもつ。屋根は、近くの登呂遺跡の竪穴式住居も想起させる原初的な形態であるが、遠くを眺めると、周囲の山々とも呼応している。

写真=上から、このはなアリーナ正面、このはなアリーナ内観、このはなアリーナ模型、登呂遺跡遠景

2015/05/23(土)(五十嵐太郎)

赤瀬川原平の芸術原論展 1960年代から現在まで

会期:2015/03/21~2015/05/31

広島市現代美術館[広島県]

広島市現代美術館へ。ヒロシマ賞の選考委員会の後、「赤瀬川原平の芸術原論」展を見る。ハイレッド・センターの活動、千円札事件、作家としての活躍はよく知られているが、それ以外についても、彼が「原平」となる以前の作品、漫画や表紙の仕事、収集癖、美学校におけるユニークな課題、ベタな風景画、ライカ同盟などの内容も、豊富な資料を使い、多面的に触れて、そのマルチタレントぶりを振り返る。当時の社会や政治に対する批評的な態度も興味深いが、いま彼のような活動は可能なのかと考えさせられる。

2015/05/17(日)(五十嵐太郎)

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BankARTスクール2015 横浜建築家列伝vol.1 五十嵐太郎+磯達雄 ゲスト曽我部昌史

BankART Studio NYK[神奈川県]

BankARTスクールの横浜建築家列伝にて、みかんぐみの曽我部昌史さんを招き、横浜関係のプロジェクトを紹介していただく。2005年からみかんぐみは横浜に移転し、横浜トリエンナーレやBankARTなど、アート関係の仕事が増え、神奈川大学の研究室では、寿町や黄金町のプロジェクトも展開した。ただし、2009年の開国博Y150のパヴィリオンを含めて、仮設的なものが続き、最近、ようやく学校など公共施設の仕事も手がけるようになった。公共施設の仕事から地域への還元にシフトした飯田善彦とは、逆の順番である。

2015/05/15(金)(五十嵐太郎)

NFCコレクションでみる日本映画の歴史

東京国立近代美術館フィルムセンター展示室(常設展)[東京都]

国立近代美術館フィルムセンターへ。常設展示は、日本における映画の受容と発展を、貴重な映像資料、当時のカメラ、脚本、ポスターなどで紹介する。特に、いわゆる「映画」として確立される以前の時代の、さまざまな試行錯誤が興味深い。企画展示は、「シネマブックの秘かな愉しみ」で、映画関連のさまざまな書籍を展示している。検閲者が書いた映画本などが印象に残った。

2015/05/13(水)(五十嵐太郎)

THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦

押井守監督の『THE NEXT GENERATION ─パトレイバー─』を見る。やはり、光学迷彩ヘリの戦闘シーン、謎の飛行物体の空撮による「東京スキャナー」や水路からの視点を提示した「東京静脈」を彷彿させる都市の映像はカッコいい。が、現在はすでにドローンの時代であり、リアルに政治がきな臭くなっている。押井が監修した六本木ヒルズ・オープンの頃の映像の感覚だと、ズレが生じているかもしない。

2015/05/11(月)(五十嵐太郎)