artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

Ludwig Goes Pop

会期:2015/02/12~2015/09/13

mumok[オーストリア、ウィーン]

続いて、mumokへ。これも外と内の印象が違い、入るとファサードの皮膜性を露わにする空間が視界に広がる。「Ludwig Goes Pop」展は、ポップアートの教科書のような展示である。当時のアーティストとロックの関わりから、ビートルズの「サージェント・ペパーズ」やローリング・ストーンズなどのアルバムジャケットも紹介する。むしろ印象に残ったのは、ウィーン・アクショニズムの展示企画だった。知識としては彼らの過激な身体表現を知っていたが、これだけまとまった映像と写真で見るのは初めてである。ぐちゃぐちゃ、エログロ、自傷、裸体、内蔵、スプラッタ、糞尿まみれ。彼らの活動を超えるのは大変だろう。若き日のアブラモヴィッチの姿もあった。

2015/06/20(土)(五十嵐太郎)

ゴットフリード・ゼンパー+カール・フォン・ハーゼナウアー《美術史博物館》

[オーストリア、ウィーン]

雨が振り出し、当初の予定を変え、屋内にとどまることができる、ゴットフリート・ゼンパーによる《美術史博物館》へ。これも外観より内部の装飾密度が圧倒的に高い。1階は彫刻や工芸で、右がエジプト、古代ギリシア、ローマ、左が教会と宮廷の作品である。2階は国別のヨーロッパ名画を展示し、天井の高いメインギャラリーと、それに平行する小さなサブギャラリー群によって空間が構成されている。

2015/06/20(土)(五十嵐太郎)

ハンス・ホライン《ハース・ハウス》/オットー・ワグナー《アンカーハウス》/アドルフ・ロース《ロースハウス》

[オーストリア、ウィーン]

竣工:1990年/1895年/1910年

シュテファン大聖堂の横の広場では、ちょうどデモが行なわれていた。これに対峙するハンス・ホラインの《ハースハウス》は、意図的に仮面としてファサードの表現を行なう。ただし、内部の衣服売り場に関しては、特筆すべきことがない。シュテファン大聖堂周辺では、お約束のホライン、ロースなどの店舗をめぐる。大きな建築のごく一部の小さな路面店で、半世紀前、一世紀前のインテリアだが、いまも現役で残っているのは、日本では考えられない。またワグナーの《アンカーハウス》は、足下を鉄とガラスで軽く包む。《ロースハウス》は、王宮の向かいながら、上部は装飾を排除する。ところで、今回はウィーン市内でも、ショッピングモール的な施設が増えている印象を受けた。

写真:左上から、ホライン《ハースハウス》《シュリン宝石店I》《シュリン宝石店II》《レッティ蝋燭店》、右上ら、《シュテファン聖堂》(2枚)、ロース《アメリカン・バー》、ワグナー《アンカーハウス》、ロース《ロースハウス》

2015/06/20(土)(五十嵐太郎)

Vienna Biennale 2015: ldeas for Change

会期:2015/06/11~2015/10/04

MAK(オーストリア応用美術博物館)、クンスト・ハレ・ウィーン、応用美術大学、ウィーン建築センター[オーストリア、ウィーン]

MAK(オーストリア応用美術博物館)は、ウィーン・ビエンナーレ2015のメイン会場であり、「変革のためのアイデア」を全体テーマとし、「フューチャー・ライト」「マッピング・ブカレスト」「不揃いの成長」などのテーマ別の展示を行なう。あいちトリエンナーレ2013のダン・ペルジョブスキ、ワリッド・ラードも参加している。「不揃いの成長」展のパートは、年末にMoMAで見た企画の巡回であり、同館の学芸員のペドロがキュレーションしたもので、成長する超巨大都市に対する建築家たちの提言を紹介する。これと並ぶように、ウィーンの未来を考える、スマートライフ・イン・ザ・シティ2051のアイデア集が展示されていた。ただ、MAKの白眉は、やはり世紀末から20世紀初頭の家具・工芸のデザインの常設展示である。ワグナー、オルブリヒ、モーザー、ホフマン、ロースほかの作品をまとめて鑑賞できるからだ。また影でさまざまな椅子のシルエットを見せる通路を設けた歴史主義/アールヌーボーの美しい展示手法は、昔と同じままだった。

写真:左=《MAK》、右上から「フューチャー・ライト」、「マッピング・ブカレスト」、「不揃いの成長」、スマートライフ・イン・ザ・シティ2051のアイデア集

2015/06/20(土)(五十嵐太郎)

ヨゼフ・マリア・オルブリッヒ《セセッシオン館(分離派会館)》

[オーストリア、ウィーン]

竣工:1897年

完成当時は非難され、いまやウィーンのシンボルのひとつになった《セセッシオン館》。昔の写真と比べると、内部と外部ともにかなりの装飾が減り、現在はキュービックなヴォリュームの構成がわかりやすくなっている。地下の資料展示を見ると、クリムトもこの建物の初期スケッチを描いていた。この案は採用されていないが。

2015/06/20(土)(五十嵐太郎)