artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
建築倉庫
[東京都]
新しくオープンした建築倉庫@天王洲アイルは、建築模型専用の収蔵庫を開放する試みである。実際、展示空間として歩くルートの幅や鑑賞のための引きがゆったり確保されているわけではなく、保存棚の隙間を歩くような感じで、コンセプトどおりの場だった。坂茂、隈研吾、名和晃平のSANDWICHらの模型を収蔵しており、これからも量は増えていく予定だ。僕の世代だと、香山壽夫らの模型に80年代の懐かしさを感じるなど、各時代の変遷を楽しんだり、学生だと模型制作のネタとして鑑賞できるだろう。
2016/07/02(土)(五十嵐太郎)
ミケランジェロ展 ルネサンス建築の至宝/講演会 ミケランジェロの建築に見る古代との闘い
会期:2016/06/25~2016/08/28
パナソニック 汐留ミュージアム[東京都]
パナソニック汐留ミュージアムに巡回したミケランジェロ展は、山梨県立美術館の会場と比べて小さいのだが、ドローイングがあまり大きくないので、むしろハコのサイズがちょうどよい。また吉野弘による会場デザインは、可動壁に小刻みなアーチの仮設壁を組み合わせたり、直交だけではなく、斜めに進んでいく空間もつくるなど、興味深い試みである。展示を監修した飛ヶ谷潤一郎のレクチャーは、ミケランジェロと古代ローマの関係について論じていた。
2016/07/02(土)(五十嵐太郎)
新しい建築教育の現場
会期:2016/06/12~2016/08/22
LIXILギャラリー[東京都]
東大の建築学科にできたT_ADSは、デザインする人、構造計算する人、インテリアをつくる人など、ズタズタに分割された建築界をもう一度つなぎ直すための場所。そのラボを再現した会場には、オガクズやワリバシなど大量の木っ端をくっつけて固めたものがころがっていて、建材や遊具の材料として使うのだろうか。建築学科の教室というより、まるで彫刻家の工房みたい。
2016/07/01(金)(村田真)
「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」企画発表会
会期:2016/06/28
上野精養軒[東京都]
この秋、茨城県北部で開催される芸術祭「KENPOKU ART 2016」の記者発表。これだけ国際展や芸術祭が増えてくると、よっぽど大金かけて海外の大物アーティストを呼ぶとか、ケガ人続出みたいな気の狂った企画を立てないと注目を集めないが、「KENPOKU ART」はどちらでもない。裏返せばとても真っ当な、もっといえば優等生的な芸術祭になりそうだ。まずテーマだが、「海か、山か、芸術か?」。テーマになってないが、田舎でやるんだという意気込みというか開き直りは伝わってくる。場所は日立市や高萩市など5市1町、のべ1,652平方キロ(越後妻有の2倍強)におよぶ広大な地域だが、そこにまんべんなく作品を点在させるのではなく、見に行きやすいように「日立駅周辺」「五浦・高萩海浜」「常陸太田鯨ヶ丘」「奥久慈清流」の4つのエリアに分け、作品を集中させるという。よくも悪くも越後妻有ほど非常識ではないのだ。総合ディレクターは森美術館館長の南條史生、キュレーターには札幌国際芸術祭にも関わった四方幸子の名前も。出品作家はミヒャエル・ボイトラー、藤浩志、日比野克彦、石田尚志、イリヤ&エミリア・カバコフ、妹島和世、須田悦弘、チームラボなど約20カ国から100組近く。地域の人たちとの対話を通して作品プランを組み立てるアートハッカソンを実施して選出したり、県南部のアーティスト・イン・レジデンス「アーカス」の経験者や、伊藤公象、國安孝昌、田中信太郎といった地元作家も入れ込んでバランスをとっている。海あり山あり芸術もあり、ちゃっかり各地の芸術祭の「いいとこどり」をしているような印象もある。後出しだからなあ。でもひとつ感心したのは、県知事で実行委員会会長の橋本昌がとても熱心なこと。会場からの質問も人任せにせず、みずから積極的に答えていた。トップが引っぱっている。出しゃばりすぎなければ最強だ。
2016/06/28(火)(村田真)
日伊国交樹立150周年記念 世界遺産 ポンペイの壁画展
会期:2016/04/29~2016/07/03
森アーツセンターギャラリー[東京都]
今年は日伊交流150周年ということで、イタリア関連の展覧会が目白押しだ。作品数は決して多くなかったが、単純な第一から線が異様に細い第三様式、そして複合系の第四様式の推移がわかる建築画やエルコラーノの優れた人物画などが展示されていた。第二様式は、近景と遠景にラフな透視図、中景に軸測投影が混ざる興味深い空間の表現である。森タワーのエレベータを降りると、今度はカオス*ラウンジによる東京の場所の記憶を扱う風景地獄展が待ち受けていた。
2016/06/26(日)(五十嵐太郎)