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建築に関するレビュー/プレビュー

トーク 川俣正のアートプロジェクト

会期:2016/07/24~2016/07/25

仙台市営地下鉄東西線国際センター駅2階市民交流施設 青葉の風テラス[宮城県]

川俣正のトークで聞き手をつとめるために、仙台の国際センター駅へ。いつも通過していた駅だが、この場所は京阪なにわ橋駅アートエリアB1のように使えたらいいと思う。前半のレクチャーでは、初期の過激な造形から社会的プロジェクト、道、橋、塔、ツリーハウスのタイプへの展開を話し、近作はいわゆる「地域アート」と違う参加と見せ方を試みるという。せんだいメディアテークが新しくアート・ノードの事業を立ち上げるのに、皮切りとして川俣正のトークが行なわれたが、彼も仙台でプロジェクトを始めるべく、サイトのリサーチに着手するという。これも含めて、今後、全国で濫立する芸術祭とは異なる方法論が仙台で模索される。

2016/07/27(水)(五十嵐太郎)

森田一弥リノベーション

[京都府]

《Gの別宅》近くの山崎泰寛、井口夏実の家を訪問する。これは森田一弥による古い家のリノベーションである。一階は玄関からいきなりベッドが見えて驚くのだが、寝室や書斎とする。次に2階のリビングとキッチンを体験し、この構成を納得する。周辺家屋が近接するなかで、2階ならば開放的な見通しを確保できるからだ。斜面になった背後は、天皇陵が目の前である。必要な強度は確保しつつも、屋根や壁などはフル補修ではなく、今度も続くリノベーションの過程としての住まいだった。

写真:左列・左上=山崎泰寛・井口夏実の家、天皇陵

2016/07/23(土)(五十嵐太郎)

《Gの別宅》

[京都府]

竣工:2015年

銀閣寺近くのGの別宅を見学する。木村松本+田所克庸+加藤正基の設計、伊藤智寿らの施工による連棟長屋住宅のリノベーションである。路地奥の長屋の一部、細長い小空間に常滑の水野製陶園の煉瓦を積んだ段々の壁が挿入され、圧倒的な存在感をもつ。煉瓦の壁は、隣との遮音のほか、段差や隙間のある積み方によって、小物置きとしても機能する。床は三和土。合板の二階は別世界だが、小さな吹抜けで上下をつなぐ。そして奥は減築によってテラスを生む。

2016/07/23(土)(五十嵐太郎)

アンテルーム増床リニューアルオープン&「ULTRA×ANTEROOM exhibition 2016」

会期:2016/07/22

ホテルアンテルーム京都[京都府]

ホテルアンテルーム京都の増床リニュアルのオープンへ。UDSの企画設計と名和晃平が率いるSANDWICHのアートディレクションにより、代ゼミの学生寮がアートのある客室に変化した。1階は名和晃平、蜷川実花らの庭付きコンセプトルーム。6階は金氏徹平、ヤノベケンジ、宮永愛子らのコンセプトフロア。そして2~5階は若手作家のスペース。作品を買い取って、部屋に固定化するのではなく、むしろ365日アートフェアを掲げ、宿泊した人が作品を購入でき、それにより作品も入れ替わる。一方、アーティストにとっては貸画廊とは違う、発表の場として機能する。せっかくアンテルームでのトークなので、名和さん一推しの若手、木村舜が制作した感情・行動(笑い、食べるなど)やキャラ(社畜)に基づく歪んだ人体のドローイングと彫刻がある、1階の庭付きの部屋に泊まる。夜は庭の彫刻の頭がぐるぐると光って、なかなかに不気味。ヒバ材による楕円のバスタブは使って水を吸うと香りを放つ。

写真:左=上から、名和晃平、蜷川実花、金氏徹平 右=上から、ヤノベケンジ、宮永愛子、木村舜

2016/07/22(金)(五十嵐太郎)

プレビュー:あいちトリエンナーレ2016 虹のキャラヴァンサライ

会期:2016/08/11~2016/10/23

愛知芸術センター、名古屋市美術館、名古屋市内のまちなか、豊橋市内のまちなか、岡崎市内のまちなか[愛知県]

3年に1度、愛知県で開催される現代アートの祭典。3回目の今回は芸術監督に港千尋を迎え、「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」をテーマに、国内外100組以上のアーティストによる国際展、映像プログラム、パフォーミングアーツなどが繰り広げられる。またプロデュースオペラ「魔笛」の公演も行なわれる。テーマの詳細は公式サイトで調べてもらうとして、今回の大きな特徴は、豊橋市が会場に加わりますます規模が拡大したこと、キュレーターにブラジル拠点のダニエラ・カストロとトルコ拠点のゼイネップ・オズらを招聘し、参加アーティストの出身国・地域が増えたことなど、拡大と多様化を推し進めたことが挙げられる。この巨大プロジェクトを、港を中心としたチームがどのようにハンドリングしていくかに注目したい。個人的には、豊橋市が会場に加わることを歓迎しつつ、酷暑の時期に取材量が増えることにビビっているというのが正直なところ。前回は1泊2日で名古屋市と岡崎市を巡ったが、今回は1日1市ずつ3回に分けて取材しようかなと思っている。

2016/07/20(水)(小吹隆文)

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