artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

手塚建築研究所《あさひ幼稚園》ほか

[宮城県]

竣工:2012年

南三陸では、手塚建築研究所による《あさひ幼稚園》を探した。移築だろうか、復興ニュータウンの入口にあたる高い場所に建つ。そして久しぶりに防災庁舎に向かうと、場所がわからない。ここも巨大なマスタバ群で完全な異世界に変貌している。ようやく土の山のあいだにちょこんと残る目的地を発見したが、被災後に風景があまりに変わったことに改めて衝撃を受ける。

写真:上から、《あさひ幼稚園》、防災庁舎

2016/07/17(日)(五十嵐太郎)

陶器浩一、大西麻貴+百田有希/o+h、永井拓生、高橋工業《さとうみステーション》ほか

[宮城県]

竣工:2013年

大西麻貴+百田有希の《さとうみステーション》へ。大胆な曲線が立面に展開し、道路からもすぐにわかる強い視認性をもった形態である。こちらも日曜で休みだったが、内部はよく見える。6mmの鋼板を曲げた大小のアーチを複数組み合わせながら、建築空間をつくる。手すりなどの細部はかわいらしい。構造は陶器浩一、施工は被災した気仙沼の高橋工業である。すぐ近くには、チャオ・ヤン、妹島和世、渡瀬正記らによる気仙沼大谷のみんなの家と、陶器浩一研による竹や土を使った《竹の会所》が建てられていた。いずれも海に面しており、よく使われているようだった。くまもとアートポリスのように建築家物件が点在するが、3.11後の被災地は小さく明快でシンプルな作品が多く、必ずしも公共建築ではなく、独自にファンドレイジングしているケースも少なくない。

写真:左上2枚=《さとうみステーション》 左下・右上=《気仙沼大谷のみんなの家》 右中上=《浜の会所》 右下2枚=《竹の会所》

2016/07/17(日)(五十嵐太郎)

伊東豊雄建築設計事務所《K-port》

[宮城県]

竣工:2014年

気仙沼では、伊東豊雄が設計した《K-port》で、コーヒーを飲む。《座・高円寺》をほうふつさせる特徴的な屋根のカフェを、鉄の庇で磯屋水産と連結する。びっくりするくらい人で賑わっていた。海辺で被災した気仙沼向洋高校と、山側の仮設校舎の両方を訪れた。下部に津波が直撃した被災校舎はぽつんと残るが、そのままの状態で囲われ、手前には巨大なマスタバがあって、視界がさえぎられる。近くには水難慰霊の塔や破壊された墓が寂しげな風景で、独特の雰囲気をかもし出す。

写真:左列=《K-porrt》 右=上から2枚、被災した気仙沼向洋高校、気仙沼向洋高校の仮設校舎、水難慰霊の塔

2016/07/17(日)(五十嵐太郎)

りくカフェ本設

[岩手県]

竣工:2014年

陸前高田の中心部は、土地改造のために至るところに巨大なマスタバだらけである。自然による建築破壊よりも、人為的な工事が根本的に風景を変えてしまった。ここでは震災遺構として、被災した道の駅、集合住宅、一本松、ユース、学校が点在し、かろうじて記憶をつなぐ。現地でかさ上げの高さを確認すると、なるほどみんなの家は途中まで埋もれる。成瀬猪熊による本設りくカフェは、休日なので中に入れなかったが、片流れの屋根をを風車型に4つ配置し、シンプルながら印象的な外観である。

写真:左=上から、陸前高田市役所、道の駅、被災集合住宅 右=上から、一本松、学校、《りくカフェ》

2016/07/17(日)(五十嵐太郎)

新居千秋都市・建築設計《大船渡市民文化会館・市立図書館/リアスホール》/SALHAUS《陸前高田市立高田中学校》

[岩手県]

竣工:2008年/2016年

2011年3月、二度目に大船渡のリアスホールを訪れたときは、あらゆる場所が避難所に転用されていたが、いまは完全に平常に戻った状態である。続いて、コンペで選ばれたSALHAUSの海を望む陸前高田市立高田東中学校の現場へ。スタッフに案内してもらう。被災した2校を含む3校の統合移転であり、木梁の曲線美をもつシンボル的な大屋根が山の延長のように続く。室内はそれぞれの段差にリニアに部屋を並べ、上下は吹抜けや大階段でつなぎ明快なプログラムだ。

写真:上から。《リアスホール》、陸前高田中学校の現場、模型

2016/07/17(日)(五十嵐太郎)