artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
「てっさい堂」貴道裕子コレクション:美しき日本の小さな心──豆皿、帯留、ぽち袋
会期:2013/01/02~2013/01/20
美術館「えき」KYOTO[京都府]
京都の古門前通りで伊万里の豆皿をはじめとする骨董を扱う「てっさい堂」。今展はその店主、貴道裕子氏の豆皿、帯留、ぽち袋のコレクションを一堂に展覧するというもの。駆け込んだ最終日は案の定多くの来場者、特に女性で賑わっていた。展示を見るために牛歩の列に並んだ帯留の展示コーナー以外は、さほど窮屈でもなかったのだが、なにしろ全体のボリュームが凄い。陳列された豆皿、帯留、ぽち袋は、どれも手のひらに収まる小さなものばかりだが、それらはじつに圧倒的な数量で、会場をふと見渡して呆然としたほど。感心というより感服だ。見てまわるのにとにかく時間がかかるのだが、模様や装飾、モチーフの可愛らしさ、繊細な美しさ、ユニークなテーマやシリーズものの面白さなど、どれも魅力がある。圧巻はやはり帯留の装飾であった。趣向が凝らされた展示ケースや展示法も、見応えのある展覧会であった。
2013/01/20(日)(酒井千穂)
プレビュー:PAT in Kyoto 京都版画トリエンナーレ2013
会期:2013/02/23~2013/03/24
京都市美術館[京都府]
デジタル技術の発展等により、技法やジャンルの可能性がますます広がりつつある版画。その一方、技術が進むほどに「刷る」というプリミティブな手法が見直される側面もあるだろう。そんな版画を巡る状況に呼応したのか、新たな版画トリエンナーレが京都で始まることになった。形式は一般公募ではなく、複数のコミッショナーによる推薦制を採用。展示方法も、シリーズ作品やインスタレーション的大作の出品を可能にするなど、柔軟な姿勢が貫かれている。選出された若手・中堅の21作家が、どのようなかたちで版画表現の豊かさを見せてくれるのかに期待したい。
2013/01/20(日)(小吹隆文)
プレビュー:展覧会ドラフト2013 Project'Mirrors'
会期:2013/02/05~2013/02/26
京都芸術センター[京都府]
「展覧会ドラフト」とは、2名の審査員により展覧会企画を選出する公募展のこと。今回は、尾崎信一郎(鳥取県立博物館副館長)と住友文彦(フリーランス・キュレーター)が審査員を務め、稲垣智子(美術家)+高嶋慈(批評家)+多田智美(編集者)による「Project'Mirrors'」を選出した。その詳細は、稲垣智子の作品展を稲垣自身と高嶋がキュレーションして2つの展覧会を行ない、多田がカタログ制作者として展覧会全体にかかわるというもの。異なる立場の3人がひとつの場をつくり上げることで、どのような展覧会が形つくられるのかが興味深い。
2013/01/20(日)(小吹隆文)
プレビュー:津上みゆき展 View─まなざしの軌跡、生まれくる風景
会期:2013/02/02~2013/02/24
一宮市三岸節子記念美術館[岐阜県]
一貫して《View》と題した風景画を描き続けている津上みゆきが、大規模個展を開催。彼女は日々スケッチを描いており、目に映る情景のなかから心が呼応したものを絵画作品へと昇華させる。本展では、大原美術館のアーティスト・イン・レジデンスで描いた200号4点の《View-“Cycle”26 Feb.,-10Apr.,05》や、国立国際美術館所蔵の200号《View-at11:15a.m. 30 Mar.,06-09》、個人の特別な日に思いを馳せた《View-13 thoughts,2010-12》、そして本展のための500号の新作など約60点を出品。彼女自身、美術館での個展は初めてであり、力の入った展示が見られそうだ。
2013/01/20(日)(小吹隆文)
武蔵野美術大学建築学科 芦原義信賞・竹山実賞、卒業制作選抜講評会
武蔵野美術大学[東京都]
武蔵野美術大学にて、審査を担当した芦原義信賞の授賞式に出席した。今回選んだのは、梶原紀子が栃木県で企画運営している、もうひとつの美術館である。廃校となり、存続が危ぶまれていた木造校舎をリノベーションによって救い、ハンディキャップのある人のアートを専門に展示する施設だ。いまでこそ、類似したスペースはだいぶ増えたが、これを10年も前にオープンさせ、しかもずっと継続させてきた実績を高く評価した。それにしても、武蔵野美術大学の建築学科は、さまざまなジャンルに人材を輩出していると思う。
2013/01/19(土)(五十嵐太郎)