artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
木野智史 展

会期:2013/01/14~2013/01/26
ギャラリー白3[大阪府]
ロクロ成形と磁土にこだわった、シャープなフォルムの陶芸作品を発表する木野智史。それらは実用品ではないが、かといってオブジェ(=ファインアート)の一言で片づけられるものでもない。陶芸の技法、精神、歴史を尊重し、陶芸でしかありえない、それでいて従来の何ものとも違う造形。それが彼の目標ではなかろうか。本展では、ロクロ成形した円環の1カ所に切れ目を入れ、その部分を起点に大胆な反りを入れた作品を発表。紙にサッと描いた一本線のような、緊張感のある形態をつくり出すことに成功した。その形態に、磁土特有の白い地肌と澄み渡る青磁釉がマッチしていたのは言うまでもない。
2013/01/14(月)(小吹隆文)
会田誠 展

会期:2012/11/17~2013/03/31
森美術館[東京都]
森美術館の会田誠展を訪れる。多くの作品はすでに見ていたが、初期のもので知らないものが幾つかあって、それが収穫だった。こうしたまとめて作品を見ると、パロディ+笑い+高尚なものへのルサンチマンが一貫している。ただ、いまやネタがベタになる時代だ。批評的に機能していた会田の作品は、社会が変わったことで、その受容も変わったのではないかと思う。例えば、会田誠の戦争画RETURNSシリーズは密度が高い作品だが、当時の左翼的知識人への違和感が制作の背景にあったという。同じ時代を生きていたものとして会田の感じていた雰囲気はよくわかる。しかし、いまの日本社会は左翼的言説が消滅し、まるで違う位相だ。「天才でごめんなさい」の展覧会タイトルも、観客にはベタに受けとられるのかもしれない。ちなみに、筆者が好きな作品は、新宿御苑改造計画である。
2013/01/13(日)(五十嵐太郎)
美術にぶるっ!ベストセレクション 日本近代美術の100年

会期:2012/10/16~2013/01/14
東京国立近代美術館[東京都]
東京国立近代美術館の「美術にぶるっ!」展の最終日はさすがの人出だった。展示のサイン・デザインが良い。常設でときどき見ていたものが勢揃いしていたが、西洋風を模倣する前衛よりも、近代日本画の方がクオリティが高いように思われた。いっそ企画展用の別棟をつくり、このオールスター展示をいつでも常設で見られるようにすると、美術館に迫力が出るかもしれない。ただ、海外コレクションはちょっと弱い。第二部「実験場1950s」は、原爆のテーマを基層としながら、東近美が誕生した時代を振り返る。当時の印刷物などを見ながら、僕が生まれる前だが、この空気感を覚えていると気づく。まだ時代が連続していた、と。では、いつ断絶したのか? 1990年代かもしれない。
2013/01/13(日)(五十嵐太郎)
澤田知子「SKIN」

会期:2013/01/12~2013/02/24
MEM[東京都]
澤田知子の新作展は驚きを与えるものになった。デビュー作の「ID400」(2000)以来、彼女は一貫して「内面と外見の関係」をさまざまな状況で、さまざまなコスチュームを身にまとって検証していくセルフポートレート作品を制作・発表してきた。それはこれまで、内外で数多くの賞を受賞するなど大きな成果をもたらしてきたのだが、逆にその成功が知らず知らずのうちに澤田のアーティストとしての可能性を狭めることにもつながっていたようだ。2年ほど前にそのことに気づいた彼女は、かなり重症の「スランプ」に陥ってしまった。一時は、アーティストとしての活動を続けるべきか、思い悩むところまで追いつめられていたという。
そんなとき、たまたまイタリア・ボローニャで開催されたGD4PhotoArtというコンペに参加する機会があり、最終的に「勇気を奮い起こして」セルフポートレート以外の作品にチャレンジすることを決意する。それが今回MEMで展示された「SKIN」である。12点の写真に写っているのは、ミニスカート、ハイヒールを履いた女性の脚である。だがこの連作の主題は脚そのものではなく、それを包み込むストッキングだ。スットッキングは、澤田によれば「働く女性にとっての鎧」の役目を果たす。ストッキングを身に着けた女性たちが、社会においてどんなふうに見られているのか、あるいは自分をどんなふうに意識しているかを問い直すのが、この連作で澤田がめざしたことだ。それは「産業・社会・領域」というGD4PhotoArtの統一テーマにも即している。
結果的に、セルフポートレート以外の領域に踏み込んでいこうとする澤田の試みは、うまくいったのではないかと思う。「SKIN」にはたしかに澤田本人は写っていないが、自分の分身というべきオフィスで働く女性たち(靴下メーカーの社員)をモデルに、同一の状況で「タイポロジー」的に作品を構築しており、これまでの澤田のスタイルは、そのまま踏襲されている。何よりも、新たな方向に進もうとしている彼女の昂揚感が、作品全体に漂うのびやかな開放的な気分として伝わってくるように感じた。「スランプ」からはなんとか脱出できたと言えるだろう。
なお、同時期に開催された、文化庁芸術家在外研修の成果の発表展「Domani・明日」(国立新美術館、1月12日~2月3日)には、アメリカ・ピッツバーグのアンディ・ウォーホル美術館の依頼で制作されたもうひとつの新作「Sign」が展示されていた。こちらは、ウォーホルの「キャンベル・スープ」のオマージュとして、ハインツのトマト・ケチャップとマスタードを56カ国語の表示で反覆したものだ。新作で「タイポロジー」と「ポップ・アート」という新たな思考の枠組みを活用できたことで、澤田の作品のスケールがまた一回り大きくなったのではないだろうか。
2013/01/12(土)(飯沢耕太郎)
すくいとられたかたち FORMS IN FLUX

会期:2013/01/12~2013/05/06
「ドラマチック大陸」展の出品作品が少なめだと思ったら、残ったスペースでこんな企画展をやっていた。愛知県立芸大とボストン美術館付属スクールの教員6人による交流展。作品は絵画、彫刻、インスタレーション、映像と多彩だが、多彩なだけに焦点が結べず、真意がすくいとれなかった。
2013/01/12(土)(村田真)


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