artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

フジイフランソワ展

会期:2013/01/07~2013/01/19

Oギャラリーeyes[大阪府]

大阪では約2年ぶりとなるフジイフランソワの個展。今回は、付喪神を描いた百鬼夜行図風の作品や、和菓子と動物を掛け合わせた小品のほか、《月のコブコブラ》《高座龍神》と題された大作2点も出品された。特に《高座龍神》は、この作家にしては珍しく人物(正確には神像)を描いており、貴重な作例だ。今後は人物を描く機会が増えるのだろうか。次の個展がいまから楽しみだ。

2013/01/07(月)(小吹隆文)

村越としや「大きな石とオオカミ」

会期:2013/01/05~2013/01/24

B GALLERY[東京都]

東日本大震災が写真家たちに何を与え、彼らはそれをどう受けとめて表現に転化しようとしているのか。これまでも、これから先も問い続けていかなければならないことだが、村越としやの新作展にもそのことがよくあらわれていた。
福島県須賀川市出身の村越は、震災後10日目に故郷に戻り、それから断続的に福島県内の風景を撮影し続けてきた。むろん、村越は震災前から折りに触れて故郷を撮影しており、その撮影やプリントのあり方(中判カメラ、モノクロームフィルム、端正な印画)は基本的には変わっていない。だが、今回の展示を見ても、2012年11月に刊行された同名の写真集のページを繰っても、どこか以前の写真とは違っているように感じる。端的に言えば、被写体に対する「確信」の度合いが深まり、目に飛び込んでくるイメージの強度が増しているのだ。震災が、村越の写真家としての覚悟をあらためて呼び覚ましたということではないだろうか。
もうひとつ、やはり昨年刊行された村越の文集『言葉を探す』(artdish g)の震災後の日録のなかに、以下のように記されているのを読んで、「なるほど」と思った。
「11/6/22 写真学校に入ったときに新品で購入した三脚をやっと本気で使用する機会がやってきた。学生時代はほとんど使用することもなく、助手してるときはたまに持ち出して、持って歩くだけってことが多かったから、三脚にたいしてはあまり良い思い出がなかった。でもこれから暫くは福島県内の撮影を共にする」
三脚を使いはじめたことも、作品のどっしりとした揺るぎないたたずまいと関係しているのだろう。普段はそれほど目につくことはないが、撮影を支えるカメラや写真器材が、作品の出来栄えに思わぬ力を及ぼすことがあるのがよくわかる。今回の展示には、新作として大全紙サイズに引き伸ばされた福島県飯館村の山津見神社の写真も含まれていた。この神社は狼を神として祀っているのだという。村越のなかに、写真を通じて土地に根ざした地霊や神話の所在を嗅ぎ当てようという意欲も生まれてきているようだ。今後の展開が楽しみだ。

2013/01/06(日)(飯沢耕太郎)

トゥーランドット

メトロポリタン歌劇場[アメリカ、ニューヨーク]

メトロポリタン劇場にて、オペラ『トゥーランドット』を見る。垂直方向の高さや奥行きのある舞台美術は好みだ。しかし、相対する複雑な感情を楽曲で表わすモーツァルトのオペラ『ドン・ジョバンニ』とは違い、プッチーニのオペラはわかりやすい内容と曲で、オリエンタリズムの色彩が強いど派手な演出が目立つ。その感覚は、ハリウッド映画に近いというか、実際初期のスペクタクルはオペラの影響も受けていたのだろう。

2013/01/02(水)(五十嵐太郎)

メトロポリタン美術館

[アメリカ、ニューヨーク]

メトロポリタン美術館を久しぶりに訪れる。このメガ・ミュージアムは、モノを並べる展示空間も、エジプト、中国、ギリシア、イスラム、ゴシックなど、地域や時代ごとのテーマにあわせて入念につくり込み、いわばすべて本物を並べたディズニーランドのようだ。また大吹抜けの人の多さはまるで駅のようだ。日本美術のセクションでは、近世の絵に囲まれて、名和晃平によるビーズに覆われた鹿の彫刻を置く、ユニークな展示が心憎い。

2013/01/02(水)(五十嵐太郎)

2013年の初詣でる展

会期:2013/01/01~2013/01/07

CHAPチャプター2[神奈川県]

おもに黄金町界隈で活動する5人の若手アーティストが松の内ノリでやっちゃったみたいなグループ展。鏡開きのための木槌を長さ6メートルに拡大した杉山孝貴、木の壁に暗い色の絵を掛けたのでほとんど目立たない吉本伊織、会期中えんえんとインスタレーションを制作していた山田裕介ら、憎めないアーティストたちによる愛すべき作品。もう少し上を目指そうね。

2013/01/02(水)(村田真)