artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

和田みつひと「Behind Blue Light Yokohama」

会期:2009/10/31~2009/11/29

BankARTスタジオNYK、BankART桜荘ほか[神奈川県]

映像祭の期間に合わせた企画。BankART関連施設のガラスドアや窓にカラーの透明フィルムを貼りつけていく作品だが、光や色彩を投影するという点でこれも「映像」といえなくはない。夜中に黄金町の桜荘に行ってみたら、窓がピンクに染まっていた。これに近隣住人から「かつての(売春街だった)黄金町を思い出す」とクレームがつき、すったもんだの末、撤去されることに。ことはピンク色が許されるかどうかという美学の問題ではなく、あるコミュニティのなかで表現の自由と暴力を考える社会学の問題なのだ。

2009/10/30(金)(村田真)

ヨコハマ国際映像祭2009

会期:2009/10/31~2009/11/29

新港ピア+BankARTスタジオNYKほか[神奈川県]

ここ10年来、映像を見るのは時間のムダだと思って避けてきたが、この映像祭は当たり前だが映像しかやってないので、仕方なく見ることにする。まずはBankARTの1階を占有したクリスチャン・マークレーから。厖大な映画のなかの楽器の演奏シーンを抜き出して四重奏として構成し、4面スクリーンで見せている。これはすごい。いつのまに映像はこんなに進化していたのか。時間がないので次へ行きたくても足が動かない、それほど釘づけになった。2階3階にはこれほどの作品はなかったものの、それでも退屈することなく楽しんで見ることができた。さすがに質の高い作品ばかり集めてるわい。と思って新港ピアの会場へ行くと、こちらはスカスカで肩スカし。でもそれなりに納得の映像祭ではある。

2009/10/30(金)(村田真)

現代美術展──《閾》

会期:2009/10/19~2009/11/07

旧坂本小学校[東京都]

東博の横道をチコチコ歩いて鴬谷の向こうの旧坂本小学校へ。東京藝大と台東区がツルんで街をにぎやかす「上野タウンアートミュージアム」の会場のひとつで、出品は藝大関係者が中心だが、フランシス真悟や秋好恩ら藝大と無関係者や、フランス・ナント市の美術学生も参加している。ま、いい作品が落ちてれば枠組みなんざどうでもいいが。元教室に白砂を敷きつめてゴミやガラクタを配置した福田美沙の《不在の庭》、半馬神の木像を置いた太田祐司の《半馬博物館》、自分の血を固めてキャンディにした松田直樹の《ブラッドキャンディ》、ガラス窓に花模様を描いた秋好恩の《花雲》などが印象に残った。

2009/10/30(金)(村田真)

皇室の名宝──日本美の華

会期:2009/10/06~2009/11/03(1期)

東京国立博物館[東京都]

若冲の《動植綵絵》全30幅が出ているというので、第1期の終了間近に見に行く。朝一番に出かけて真っ先に若冲の部屋に駆けつけたが、会場はすでに黒山の人だかり。それでもなんとか見ることができた。若冲はやっぱりすごい。なにがすごいかって、彼は動植物を描こうとしているのではなく、「絵」を描こうとしていることだ。このなかで若冲に匹敵するのは、唯一北斎の《西瓜図》だけではないかしら。それに比べりゃ抱一の《花鳥十二カ月図》など屁みたいなもの。

2009/10/30(金)(村田真)

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ルイ・カーン展

会期:2009/10/10~2009/11/22

ギャラリーヤマキファインアート[兵庫県]

ルイ・カーンといえばシュポール/シュルファスの作家。その程度の知識しかなく、有名作家の新作を関西で見られるなんて、という一点で画廊に出かけた。メッシュの上に半透明の絵具で描かれた作品は、エレガントな軽やかさを放っており、いかにもフランス人という感じ。モネの《睡蓮》との関連もうかがえる。支持体の特性ゆえ透過光が壁面に映り、エコーのような効果を上げているのも印象的だった。

2009/10/30(小吹隆文)