artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

ニューアート展2009 写真の現在・過去・未来──昭和から今日まで

会期:2009/10/09~2009/10/28

横浜市民ギャラリー[神奈川県]

横浜開港150周年記念事業の一環として開催された写真展。他に横浜美術館で「近代日本の残像──幕末明治から大正へ」展(9月19日~11月23日)、横浜市民ギャラリーあざみ野で「Photo Communication」展(10月23日~11月8日)も開催された。横浜は1862年に下岡蓮杖が写真館を開業した「写真発祥の地」でもあり、このような連動企画はなかなか面白い試みだと思う。
関内駅前の横浜市民ギャラリーでの「写真の現在・過去・未来」展は、横浜市民ギャラリーと横浜美術館のコレクションからピックアップした「昭和の写真」、山手地区を撮影するという市民参加のプロジェクト「未来に残したいヨコハマの風景」、池田晶紀、進藤万里子、原美樹子の三人展「現代の写真表現」の三部構成である。やや総花的な企画で、焦点がぼやけているのは否定できないが、写真表現の多様な広がりをできるだけ噛み砕いて伝えたいという主催者側の意欲は伝わってきた。原美樹子の浮遊感のあるスナップ、「未来に残したいヨコハマの風景」のプロジェクトにアドバイザーとして参加した常磐とよ子の力強い作品などは、なかなか見応えがあったが、全体的に見ると、やや入り込みにくい印象を観客に与えたかもしれない。丁寧なキャプションやわかりやすい順路の設定など、もう一工夫必要だったのではないだろうか。

2009/10/12(月)(飯沢耕太郎)

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水都大阪2009

会期:2009/08/22~2009/10/12

中之島公園・水辺会場、八軒家浜会場、水の回廊・まちなか会場[大阪府]

大阪・中之島エリアを中心に、約7週間にわたって多数のワークショップ、展覧会、各種イベントが開催された「水都大阪2009」。しかし、終了後に改めて思ったのは、果たしてこの催しにアートは必須だったのかという疑問だ。もちろん、ヤノベケンジは奮闘したし、今村源が適塾で行なった展示は見応えがあった。ワークショップのなかにもきっと素晴らしいものがあったのだろう。でも、私が何度か会場を訪れて感じたのは、アートと言うよりも文化祭的な狂騒ばかりだ。いや、最初からアートは脇役で、私が勘違いしていただけなのかもしれない。結局、最後まで意図を理解できないまま「水都大阪」は終わってしまった。

2009/10/12(月)(小吹隆文)

一蝶リターンズ ~元禄風流子 英一蝶の画業~

会期:2009/09/05~2009/10/12

板橋区立美術館[東京都]

元禄の画家、多賀朝湖(たが・ちょうこ)、後の英一蝶(はなぶさ・いっちょう)の展覧会。近年新たに発見された作品も含めて50点が一挙に公開された。さまざまな身分の人びとが同じ門の軒下で雨宿りをする光景を描いた《雨宿り図屏風》のように、一蝶の絵には清濁併せ呑む度量の大きさと、滝浴びをするお不動さんが背中の炎が消えないように剣と一緒に脇へ置くしぐさを描いた《不動図》のように、茶目っ気のある可笑しさがある。そのほかにも、盲人の坊主が茶をひいているところに、紙をぶらさげた棹で背後からくすぐる《茶坊主》、鳥居に千社札を貼るのではなく直接筆で書いてしまおうとして、長い棒の先に筆をくくりつけて人の背中によじ登って手を伸ばす《社人図》など、滑稽で悪戯心に満ちた作風がなんとも魅力的である。

2009/10/11(日)(福住廉)

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ある風景の中に

会期:2009/09/15~2009/10/18

京都芸術センター[京都府]

梅田哲也、岡田一郎、鈴木昭男、ニシジマアツシ、藤枝守、矢津吉隆、6名による展覧会。日常的な風景や音を別の角度から見直すことで新たな風景なり音を見出そうとしていたようだ。ワークショップルームを全面的に使った梅田哲也は、洗濯機や扇風機といった日常用品を巧みに連結させ、有機的な世界を構築した。水を湛えたシンクに浮かべられたおびただしいアルミの小皿は、水中ポンプからエアーが吐き出されるたびに、お互いがこすれあい、風鈴のような、ヒグラシのような、心地よい音を発していた。

2009/10/10(土)(福住廉)

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岡本光博 skin

会期:2009/09/29~2009/10/11

GALLERY はねうさぎ[京都府]

岡本光博の新作展。表象批判のアーティストとして知られているが、今回の傑作はヴィトンのバッグの柄で作られたバッタの立体作品。3種類のパターンを中国の工場に発注し、日本に帰国後に組み立てたという。壁に貼りついたバッタたちは、いったいどこへ飛び立とうとしているのだろうか。表象批判というアートならではの作法が忘れられつつある今だからこそ、こうした作品は今以上に評価されるべきだと思う。

2009/10/10(土)(福住廉)