artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
和田円佳「トラベリング0」
会期:2009/10/31~2010/01/03
Porto Gallery[神奈川県]
日本3大ドヤ街のひとつ、横浜の寿町。その3畳一間のドヤ(“ヤド”の逆で簡易宿泊所のこと)も住人の高齢化にともない、低予算旅行者のためのホステルに転換するところも出てきた。そのホステルのひとつ、ポルトがロビーや廊下をギャラリーとして開放し作品を展示している。わざわざこんなところまで作品を見に来る人はいないだろうし、また監視人がいるわけでもなく、恥はかき捨てる旅行者が出入りする場所だから、きわめてリスキー。いや、ここで展覧会をやらないかといわれて見に来たんです。
2009/10/31(土)(村田真)
O JUN+森淳一 展「痙攣子(けいれんし)」

会期:2009/10/21~2009/11/21
ミヅマ・アクション[東京都]
いま絵画と彫刻でもっとも注目するふたりの展覧会。とくに森のほうは大きく変わり、ふたつの作品に人間の頭が表われた。これまで髪の毛や衣服は彫刻したことがあったけど、中身の人間を作品として発表したのは初めて見た。といってもひとつはキューピーみたいな子どもの人形の顔、もうひとつは歯のついた顎骨を球状に組み合わせたもので、どちらも人間らしくないが。
2009/10/31(土)(村田真)
岡田裕子 展「翳りゆく部屋」

会期:2009/10/21~2009/11/21
ミヅマアートギャラリー[東京都]
ゴミの山に囲まれて小さな老婆がキーキーわめいてる映像。そのモニターがゴミ屋敷を思わせる舞台装置のなかにいくつか置かれているので、あっちこっちからネズミのようにキーキーかまびすしい。この老婆、どこかで見覚えがあるなあと思って展覧会名をたしかめると、なんだ岡田裕子じゃないか。なんの展覧会をやってるのか知らずに来たのだが、意外な驚き。彼女の作品は結婚以来お笑いに走る傾向があったけど、彼女自身にこんなコメディエンヌの才能があったとは知らなかった。それにしても会場の「舞台装置」はまるで会田誠みたい、というより会田の使いまわしじゃないか。そもそもゴミ屋敷の発想自体、会田家の家庭生活に由来するだろうことは想像にかたくないが。
2009/10/31(土)(村田真)
種田陽平『どこか遠くへ』

発行所:小学館
発行日:2009年9月30日
映画の美術監督として活躍する種田陽平の自伝的な絵本。本人のエッセイや昔の写真とともに、記憶の風景が綴られる。そこで描かれる懐かしい世界が、まさに彼が『ザ・マジックアワー』や『フラガール』など、さまざまな映画において手がけた舞台装置とよく似ているのは興味深い。原風景が作品に投影されたともいえるし、逆に現在の種田スタイルが過去の記憶に重ねあわせられたのか。いずれにしろ、建築雑誌に掲載されるようなツルツルピカピカの世界ではなく、記憶が細部に宿る街が種田の好みである。彼は、どこか遠い見知らぬ街で懐かしさを感じることがあるという。実際、種田の映画美術は、建築や都市のセットをつくり、われわれに集合的な記憶を喚起させている。
2009/10/31(土)(五十嵐太郎)
中島俊市郎 展

会期:2009/10/31~2009/11/21
studio J[大阪府]
蛍光色のプラスチック素材で作られたひも状のオブジェ(カラフル!)が、大量に天井から垂れ下がっている。まるでパーティの飾りつけみたい。軽やかで、華やかで、見ているだけで楽しくなる。日頃から工芸家であることに自覚的な中島だが、今回の作品は少し雰囲気が違うなと思っていたところ、本人の説明を聞いて納得した。オブジェの両端にはフックが付いており、リングにすればネックレスへと変身するのだ。いや、ネックレスが本来の姿で、むしろ今回の展示がバリエーションということか。「自分はあくまで工芸家ですから」。そんな作家の自負が聞こえてくるようなプレゼンだった。
2009/10/31(小吹隆文)


![DNP Museum Information Japanartscape[アートスケープ] since 1995 Run by DNP Art Communications](/archive/common/image/head_logo_sp.gif)