artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
カールステン・ニコライ「ポリ ステラ」
会期:2009/04/04
霞が関ビル[東京都]
日本初の超高層ビル、霞が関ビルのふもとに出現したパブリックアート。こういう不特定多数の人々が行き交う場所に彫刻を設置するとき、芸術性よりなにより安全性と耐久性が求められる。そのため形態的にも内容的にも角のとれた丸い作品が多くなりがち。その点、カールステン・ニコライの彫刻はカミソリのように尖っていて、不穏な輝きを宿している。このくらい刺激的でないと、わざわざ彫刻を置く価値がないだろう。
2009/04/04(土)(村田真)
池田亮司展 +/-[the infinite between 0 and 1]

会期:2009/04/02~2009/06/21
東京都現代美術館[東京都]
作曲家/アーティストの池田亮司の個展。複雑な世界のありようをサイン波やピクセルといった「データ」に還元する作風で知られるが、今回の個展で明らかになったのはその還元の仕方がきわめて単純かつワンパターンであること。すべての作品は、白と黒、ポジとネガといった二項対立の図式にもとづいているため、いちどそのパターンを発見してしまうと、それ以上の楽しみを見出すことが難しくなってしまう。むしろ、図らずも画面の表面に付着した小さな埃の塊が、そうした二項対立を相対化するノイズとして、よっぽどリアルに感じられた。作品数が少なく、美術館の空間をもてあましていたのも、もったいない。
2009/04/04(土)(福住廉)
国立トレチャコフ美術館展──忘れえぬロシア

会期:2009/04/04~2009/06/07
Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]
なんだ、まだワイエス展をやっていたのか。と、ボケをかましたくなるような外光派リアリズム絵画が並ぶ。革命以前の19世紀後半から20世紀初頭のロシア絵画を集めたもの。このリアリズム技法が、革命期のロシア・アヴァンギャルドを飛び越してその後の社会主義リアリズムに隔世遺伝したとすれば、ある意味納得がいく。
2009/04/03(金)(村田真)
万華鏡の視覚

会期:2009/04/04~2009/07/05
森美術館[東京都]
まず、これが新作展ではなく、コレクション展であることに驚かされる。しかも自分とこのではなく、よそんちのコレクションなのだ。たとえば、ブロック塀が爆発して破片が飛び散っているようなロス・カルピンテロスのインスタレーション。数百の破片が糸で吊るされているのだが、コレクションが巡回するごとにその場に行って吊るし直すのだろうか。最近日本でも人気のジム・ランビーによる床にテープを貼った作品も謎だ。床のサイズやかたちによって貼り方を変えるこの作品、いったいどうやってコレクションしてるの? つーか、このテープをコレクションしてるわけじゃないでしょうに。こんなコレクター泣かせの作品ばかり集めてるのがティッセン・ボルネミッサ現代美術財団で、その創設者はフランチェスカ・フォン・ハプスブルグ。もう名前からして大コレクター、大パトロンなのだ。
2009/04/03(金)(村田真)
万華鏡の視覚 ティッセン・ボルネミッサ現代美術財団コレクションより

会期:2009/04/04~2009/07/05
森美術館[東京都]
近年にわかに関心が高まりつつある「視覚」をテーマにした企画展。文字どおり万華鏡のようにピカピカ光ってまぶしい作品や、ガヤガヤとけたたましく音を発する作品が多く、視覚を根源的に再考させる作品はほとんど見受けられなかった。ジム・ランビーの縞々模様の上で無目的にゴロゴロと転がり続けるイェッペ・ハインの球体作品は、丸い表面にその縞模様を歪めて映し出すことで、ジム・ランビーの作品の力を本来以上に引き出す視覚的な効果を発揮していた。
2009/04/03(金)(福住廉)


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