artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

千家十職×みんぱく

会期:2009/03/12~2009/06/02

国立民族学博物館[大阪府]

千家十職とは、茶事全般の道具(茶碗、窯、表具、指物など)を作って来た十の家のこと。300年から400年を超える歴史を持ち、当代で11代から17代を数える。本展では、彼ら十職が作り出してきた名品の展示に始まり、十職の目で選ばれたみんぱく(国立民族学博物館)収蔵品と、収蔵品にインスパイアされた十職の新作との共演、みんぱく側が十職の仕事を10の動詞に当てはめ、その分類に応じてセレクトした収蔵品展示が行なわれた。アルチザンとアカデミズムのコラボレーションとでもいうべき異色企画だが、収蔵品に新たな価値を与える手法としてとても斬新だ。

2009/03/12(木)(小吹隆文)

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第12回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展

会期:2009/02/07~2009/04/05

川崎市岡本太郎美術館[神奈川県]

毎年恒例のTARO賞。611点の応募の中から21組の入選作品が展示された。岡本太郎賞の若木くるみは、一万円札を模した巨大な紙幣の中で、そりあげた後頭部を観客にさらし、そこに似顔絵を描かせるように促す観客参加型の作品。会期中もほぼ常駐して、来場者に背を向けたまま声を掛けていたが、その異様な雰囲気が来場者はもちろん周囲の作品をも圧倒していた。唯一、若木のパフォーマンス作品に拮抗していたと思うのは、花岡伸宏による《ずれ落ちた背中は飯に突き刺さる》という彫像。背中に赤子を背負った母子像を斜めにすっぱりと切断し、タイトルどおり切り落とされた背中が巨大などんぶりの白米の中に突き刺さるという、土着的なシュルレアリスムの光景がたまらない。

2009/03/11(水)(福住廉)

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鎌田仁 展

会期:2009/03/10~2009/03/22

ギャラリーはねうさぎ[京都府]

西洋の古典名画を木彫作品に起こしてしまう鎌田。前回の個展ではボッティチェリの《ビーナスの誕生》が印象的だったが、今回彼が選んだのはフィリポ・リッピの《受胎告知》に登場する天使。その姿を驚くべき細密さで彫り出したのだ。また、古典名画の人物に現代の衣服を着せた作品も初出品されたが、こちらはまだ煮詰まっていないようにも思われた。この新展開を今後どう発展させるのかが気になる。

2009/03/10(火)(小吹隆文)

柴垣美恵 展

会期:2009/03/10~2009/03/15

ギャラリーすずき[京都府]

親しい友人たちを描いたポートレイト作品と、静物や風景を描いた作品をバランスよく配置。空間から漂うくつろいだ雰囲気が心地よい。日本画の顔料とアクリル絵具を併用する柴垣だが、特に絵具の滲ませ方がうまい。また、描き過ぎず省略し過ぎずの塩梅も的確で、久々に理屈抜きで絵を楽しめた。

2009/03/10(火)(小吹隆文)

吉村芳生 展──版画・ドローイング──

会期:2009/03/09~2009/03/28

ギャラリー川船[東京都]

吉村芳生の過去作品を発表する展覧会。70年代後半から80年代にかけて制作された版画や鉛筆画を一挙に公開した。近年の自画像シリーズと同じように、それらは対象を愚直に転写したものばかりだが、今回発表された作品を見ると、写真を細かいグリッドで区切った上で、一つひとつの升目の濃度を数字に還元し、その数値を頼りに、一つひとつ別の紙の上に描き写していくというプロセスを踏んでいることが明らかになった。デジタル写真と同じ理屈を手作業で成し遂げてしまう圧倒的な持久力こそ、若いアーティストたちは見習うべきだ。

2009/03/09(月)(福住廉)