artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
大舩真言「Principle」

会期:2009.2.17~2009.3.1
neutron[京都府]
東京に続く京都での個展。偶然、友人が展示の記録撮影をしていたところに訪れた。入口から向かって正面の壁面に1点の絵画作品、左の壁面から飛び出るように設置された大きな半円形の作品が1点、そして高い位置に小作品が3点。会場は薄暗く、岩絵具独特の色合いの平面作品が闇のように深く沈んで見える。じっくりよく見ようと近づいたり離れてみたりしているうちに、見ている側の自分が、空間のなかで客体化していくような感覚を意識させられる。美しくて、極めて静謐な印象なのだが、それとは裏腹に、見つめているとなぜか胸騒ぎのように気持ちが動かされる。大舩の作品は見ているうちに印象やイメージがどんどん変化していくのだ。それに気持ちが共振するんだろうか。意外と落ち着かない、という不思議な魅力に満ちた作品だ。撮影をしていた友人に、撮るのが難しそうだと言ったら「でも大舩さんの作品を撮る時は三脚は立てないんですよ。空気が濁るから」という答えが返ってきた。それもよく解る。
2009/02/26(木)(酒井千穂)
平成20年度第32回東京五美術大学連合卒業・修了制作展
会期:2009/02/19~2009/03/01
国立新美術館[東京都]
毎年恒例の五美大展。昨年は女子美の圧勝だったけれど、今年はムサビと造形大が拮抗していたように思う。ムサビの場合、ミッキーの彫像のおしりに火をつけた大成乗治の映像作品や、千円札で消費したモノとその紙幣番号を控えたドキュメントを一挙に公開した阿部浩之、切り干し大根の工場などを撮影した仲山姉妹、あるいは美大生による社会性を欠いた美術活動を「グルーミング・アート」と名づけてその実態を克明に分析した小さな雑誌を発表した田村陽菜などが際立っていた。造形大では、おさげ姿の自分の顔などをモチーフにした穴村崇による不気味なCG作品、「半馬博物館」なる架空のミュージアムの所蔵品を公開した太田祐司などが突出していた。
2009/02/25(水)(福住廉)
田中功起 シンプルなジェスチャーに場当たりなスカルプチャー

会期:2009/02/21~2009/03/21
青山|目黒[東京都]
田中功起の新作展。映像作品は従来よりコンパクトに編集され、ショートコントのようだった。お笑いばかりか、アートも映画も小説も、そして批評も、簡潔に手短にまとめられる現在の趨勢にたいするアイロニーのように見えた。
2009/02/25(水)(福住廉)
森山蘭子 陶展

会期:2009/02/24~2009/03/01
アートスペース虹[京都府]
珊瑚や朽ちた骨などを思わせる陶オブジェ。表面に開けられた無数の穴は、粘土の塊を細い棒で何百回と突いた痕跡だ。穴の中には赤や青の顔料が染み込んでいるが、表面は拭われたのか地肌が剥き出しで、朽ちた風合いを強調している。悠久の時を経た物体だけが持つ深い味わいを我が物にせんとする強い意志がひしひしと感じられる作品だった。
2009/02/24(火)(小吹隆文)
吉田雷太 展

会期:2009/02/24~2009/03/01
同時代ギャラリー[京都府]
大きなキャンバスいっぱいに描かれた不気味な顔の数々。背景は鮮やかな原色で、顔の部分はマーブリングを思わせる細かな模様で覆われている。この模様は筆で描いたのではなく、彼が独自に編み出した技法なのだという。何とも形容し難いが、
とにかくユニークで存在感がある作品だ。その痛快な突き抜けっぷりに一票を投じたい。
2009/02/24(火)(小吹隆文)


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