artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

YOKOHAMA創造界隈コンペ2008受賞作品展

会期:2009/02/27~2009/03/08

ZAIM別館[神奈川県]

「開港150周年祝祭部門」コンペの受賞作品展。受賞したのは、コケの生えた王蟲(オウム)がくるくる回転したりするエコっぽいインスタレーションの足立喜一朗と、部屋をスタジオ代わりにして会期中いろんな人と制作する梅津庸一のふたり。プランも完成作もすっきりまとめあげた足立に対して、梅津はプランの段階からグチャグチャで、実際にガラクタを散乱させたようなインスタレーション(でもじつは巧みに配置されている)を見せ、好対照をなしていた。あ、ぼくも審査員のひとりです。

2009/03/01(日)(村田真)

ZAIMフェスタ2009

会期:2009/02/27~2009/03/08

ZAIM別館[神奈川県]

ZAIM別館を使うおそらく最後のフェスティバル。3階では入居者の作品展が行なわれている。曽谷朝絵が真っ白に塗った壁と床に虹色のライブペインティング、フランシス真悟が壁に細長い紙を張って公開制作したのは、これが最後の機会だからだろう。ところで会期中、曽谷さんのペインティングにイタズラ描きをした不届き者がいるらしい。でも観客参加型ペインティングと勘違いしたとすれば怒るに怒れない。それだけ彼女の絵が描く喜びにあふれ、見る者を誘発する力を備えていたともいえるからだ。
ZAIM FESTA 2009:http://za-im.jp/zaimfesta2009/

2009/03/01(日)(村田真)

福島の新世代2009 CLOSE TO YOU ! ──もっと近くに

会期:2009/01/10~2009/03/01

福島県立美術館[福島県]

福島県にゆかりのある美術家を紹介するシリーズ展の4回目。今回は抽象絵画の宇田義久、写真によるインスタレーションを発表した金暎淑、プロジェクトのドキュメントとそれらにもとづくインスタレーションを発表したKOSUGE1-16が参加した。とくにテーマも設けず、三者三様の表現を集めたところは潔くてよい。なかでもひときわ際立っていたのが、百日間にわたって毎日催した自分の葬儀を写真に撮影し続けたキムヨンスク。昨日の遺影を胸元に置いたポートレイトは、翌日のポートレイトでは遺影となる。日々「死」を繰り返しながら「生」を持ちこたえてゆく、ある種の脆さやはかなさが、同時代的なリアリティを獲得しているように見えた。

2009/03/01(日)(福住廉)

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川北ゆう「今日までを想う」

会期:2009.1.31~2009.3.1

studio90[京都府]

午前中の明倫茶会ですっかり高揚した気分のまま電車に乗り、川北ゆうが公開展示をしている南区の会場へ。駅から歩いて30分。公園のそばにある川北の友人のアトリエの1スペースが展示空間になっていた。川北は水や微風の動き、色、それらの感触といった微妙な現象を2次元で表現しようとする。水を使った制作で、染料や塗料が流れ動いた跡が美しい作品だ。今回は、準備と制作、展示まで、支持体のパネルを動かさずに一貫して同じ場所で行なったという。展示空間はホワイトキューブではなく黒いカーテンをつけ、壁も真っ黒に塗装した部屋で、中央にひとつだけライトが取り付けられている。床から数センチの台の上に置いた大きな平面作品が1点。ゆっくりと作品の周りを歩き回ったり、しゃがんだりしながら見る。油絵の具を使用した今展では、川の流れや川の深い色をイメージしながら制作したという。見る角度や位置によって、イメージや色の表情がころころと変転していくようで見飽きない。「いつもは平面をつくってると言ってるけど、これを見てたら平面をつくるっていうのとも違う気がしてきた」と話してくれた。壁面ではなく、床に視線を向けることになるが、それは川北が表現したい世界として今まで以上に成功していたと思うし、今後の表現の展開の可能性を広げることになったようだ。遠かったけれど、見ることができてよかった! 明倫茶会といい、川北の新作展といい、この日は素敵なことばかりで大満足。

2009/02/28(土)(酒井千穂)

明倫茶会「忘れ傘の国から」

会期:2009.2.28

京都芸術センター[京都府]

美術家のかなもりゆうこさんが座主の明倫茶会に申し込んで参加。きっと趣向を凝らした素敵なお茶会に違いないと予想していたが、大当たり。会場は芸術センター内の古い味わいのある講堂。紙が好きだというかなもりさんのセレクトで透かしやプリントの入ったさまざまな紙がランチョンマットやコースターに使われていたり、お茶がフレッシュフルーツを入れたハーブティーだったり、お菓子は手づくりのレモンケーキだったり。心躍ったのは、小さな干菓子が配られたとき。花のように折られた色紙の上に百合の花のようなお菓子が置かれたが、ピンクの色紙を開いてみたら、「水仙ラカン制す」という回文が小さく印刷されていた。作者は、この会場に消しゴムや折り紙、古本を使ったインスタレーション作品を展示していた福田尚代さん。隣の人はまた違うお菓子と回文が。まったく面識のない人だったが、お互い見合わせてにっこりし合った。主に関東で活動しているという彼女のことを私はこの日初めて知ったが、昔から読書が好きで日常的に回文が頭に浮かんでくるのだと言う。インスタレーション作品も物語性に溢れた繊細なもので、タイトルの言葉から想像が一気に広がり、すっかりファンになってしまった。そんな茶会のあいだ、テーブルの周りでは、オルゴールの上で回るバレリーナ人形のようにひとりの女性がパフォーマンス。まるで絵本の世界に迷い込んだ気分になる素敵な茶会だった。

2009/02/28(土)(酒井千穂)