artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

インシデンタル・アフェアーズ うつろいゆく日常性の美学

会期:2009/03/07~2009/05/10

サントリーミュージアム[天保山][大阪府]

「インシデンタル(日常的な、取るに足らない物事)」をキーワードに選んだ17作家の作品を展覧。宮島達男やウォルフガング・ティルマンスといった有名作家から、ニューカマーの横井七菜までが選ばれており、ジャンルもバラエティ豊か。現代アートの多様な魅力を伝える意図が強調されていた。私にとっては、さわひらき、横溝静、榊原澄人の作品を見られたのが収穫。木村友紀と田中功起の展示もいい感じだった。関西では美術館の現代アート展が明らかに不足しているので、こういう企画はどんどん増やしてほしい。

2009/03/07(土)(小吹隆文)

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やなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」

会期:2009/03/07~2009/05/10

東京都写真美術館 2F展示室[東京都]

やなぎみわの「エレベーターガール」のシリーズが出てきたときには、新鮮なショックを受けたし、近作の物語性の強い「フェアリー・テール」もかなり好きだ。でも「マイ・グランドマザーズ」は僕にはとても相性が悪い。以前もまったく馴染めないと感じたし、その印象は新作を含めて全26点が一堂に会した今回の展覧会でも変わらなかった。
女性たち(男性も3名含む)に50年後の未来を想像してもらい、メーキャップや舞台設定に意匠を凝らしてそのシーンを作り上げるというコンセプトそのものはよく理解できる。モデルとの共同作業は大変だろうが、楽しみもあるだろうし、最終的な仕上げのイメージも細部までしっかりと練り上げられている。にもかかわらず、見ていて居心地が悪いし、何だかしらけてしまうのだ。全員とはいわないが、ほとんどのモデルたちは50年後の未来の自分をポジティブに(何とも能天気に)想像している。むろんそうならない場合が大部分だろう。別に悲惨な未来を押しつけるつもりはないが、彼らのナルシシズムたっぷりの「お遊戯」に付き合わされるのはちょっと勘弁してほしいと思ってしまうのだ。
もしかすると「50年後の自分」というコンセプトに問題があるのだろうか。これが「50年後の他者」だったらどうだろう。目の前にいる人物の50年後を想像してみたら、こんなシュガーコーティングされたようなイメージばかり並ぶだろうか。誰しも自分に甘くなるので、いつもの批評性が薄まってしまっているのではないか。やなぎみわの作品は、完璧に囲い込まれた物語世界を構築した方が精彩を放つように思える。この「マイ・グランドマザーズ」のシリーズはモデルたちの記号化が不徹底で、その人格が中途半端にリアルに透けて見えるのが、居心地の悪さを引き起こしてしまうのかもしれない。

2009/03/06(金)(飯沢耕太郎)

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リチャード・ストレイトマター・チャン 右と言えば左

会期:2009/02/13~2009/03/07

プロジェクトスペースKANDADA[東京都]

ベトナムのアーティスト、リチャード・ストレイトマター・チャンによるレジデンスの成果発表展。作品の点数はある程度そろっているものの、レジデンスの発表展の多くがそうなりがちであるように、それぞれの作品の出来映えはあまり芳しくない。例外だったのは、ダンボールで作った木の作品《Interval 1 / Listening Tree》。幹に空けられた洞をのぞくと、暗闇の中で映像が流されていて、その手前には小さな人形が置かれているから、まるで映画館の最後尾から映画を鑑賞しているような感覚に陥る。また、別室にはコマンドNによるリサーチプロジェクトの記録映像が鑑賞できるようになっていたが、映像をそのまま見せる見せ方がはたしてどこまで有効なのか、疑問が残った。せっかく綿密な取材を繰り返したのだから、いっそ論文というかたちで公開するほうが、よっぽど鑑賞者=読者に届くのではないだろうか。

2009/03/04(水)(福住廉)

アーティスト・ファイル2009──現代の作家たち

会期:2009/03/04~2009/05/06

国立新美術館[東京都]

出品は石川直樹、宮永愛子、斎藤芽生、津上みゆきら9人。とくにテーマを設けずに、学芸スタッフが選んだ注目すべきアーティストたちだそうだ。そのせいか、絵画あり写真ありインスタレーションあり、問題意識もばらばらでまとまりがない。年代もなぜか30代と50代に分かれ、40代は金田実生ひとり。たまたま日本のアートシーンをすくってみたらこうなりましたって感じ。好みでいえば、闇夜のなかで妄想をふくらませつつシコシコ細密に描いてる斎藤と、昼の光の下で思いっきりストロークを振るう津上が圧倒的。

2009/03/03(火)(村田真)

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唐仁原希 展

会期:2009/03/02~2009/03/07

番画廊[大阪府]

少女と鹿が合体した半獣半身のバンビーノ(美少女)たちの絵。果樹にたわわに実る果実が皆少女の顔をしている絵。カタツムリになった少女の絵。ミッフィーやハローキティを思わせる色使いで表現された口のない少女たちの絵。唐仁原が描く少女たちは皆、どこか窮屈な姿をしている。自身の内面に宿る少女性への憧憬と嫌悪がこのような形で表出するらしい。彼女は今春大学を出たばかり。伸びシロたっぷりなので、今後が楽しみだ。

2009/03/02(月)(小吹隆文)