artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

池菜月「パラミツオレンジ」

会期:2016/06/11~2016/06/19

ギャラリー・サイトウファインアーツ[神奈川県]

「8日間のアートフェア」と同じ町内で同時開催。映画のシーンや映画に登場するさまざまな要素をコラージュのように紙に油彩で描いている。パネルに水張りして周囲をテープでとめて描き、はがしたテープの跡が画面(スクリーン?)の枠になっているのがおもしろい。作者がいたので、なんで紙に描くのか聞いてみたら、理由はふたつあって、ひとつは紙はフラットなので筆跡が残りやすいから。もうひとつは、映画の薄っぺらさを表わすのにちょうどいいから。でも紙だと売りにくいんじゃないかしら。

2016/06/14(火)(村田真)

8日間のアートフェア vol.2

会期:2016/06/11~2016/06/19

高架下スタジオ・サイトAギャラリー[神奈川県]

黄金町のレジデンスに滞在中のアーティスト15人によるアートフェア。大半が女性で、作品は絵画、写真、彫刻と多彩。BankARTのオープンスタジオにも出ていた岩竹理恵の樹木の写真がいい。背景を白く飛ばして木を1本だけ浮き上がらせている。セピア色のモノクロ写真で、ちょっとカール・ブロスフェルトを思い出させるなあ。木漏れ日のような淡い光を捉えた井上絢子の絵もそそられる。背景が黒い夜の木漏れ日(木漏れ月?)もあって惹かれるのだが、なにか足りない気もする。画面に引っかかりというか抵抗感がなく、視線が上滑りしてしまうのだ。結局なにもカワズにカエル。

2016/06/14(火)(村田真)

BankART AIR 2016 特別展

会期:2016/06/13~2016/06/20

BankART Studio NYK 2F[神奈川県]

先日までやっていた「BankART AIR オープンスタジオ」の選抜展。これはBankARTスクールの「BankART義塾 part2」の授業の一環で、オープンスタジオを見たゼミ生がそれぞれ気に入った1点を選び、アーティストに交渉して作品を借り、チラシをつくり、展覧会を構成し、あわよくば販売にまでつなげようという魂胆だ。選ばれたアーティストは、片岡純也+岩竹理恵、Bico Kondo、廖震平、松田直樹、関本幸治、三田村龍伸ら。作品の大半は先週見たものだが、新作をつくったアーティストもいる。人数が絞られた分会場が広く使え、より展覧会らしくなった印象だ。ゼミ生の稲吉稔はAIRに参加したグループ「似て非works」の代表でもあったため、自分(似て非works)を選んだのだが、これがなかなかの傑作。床に巨大な扇風機を上向きにセットし、天井から吊ったスカート状の半透明の布をフワッと浮き上がらせる装置なのだ。デュシャンとマリリン・モンローを合体させたような、身もフタもない色香を漂わせていた。肝腎の販売のほうは……みんな低調だったみたい。

2016/06/13(月)(村田真)

細川貴司展

会期:2016/06/13~2016/06/25

不二画廊[大阪府]

本展のDMハガキを見た時は、彼の作品がどんなものか、よく分からなかった。どうやら支持体は板で、木目を生かした絵作りをしているらしい。会場で実物を見ると、実物ははもう少し複雑だった。角材をつなぎ合わせた塊を凸レンズ状に削った支持体の上に描いていたのだ。画題は、濃霧がかかる山や森といった山水画的なもの。曲面を生かした魚眼レンズ状の構図も相まって、神秘的な雰囲気を醸し出している。画材は、色鉛筆を中心に、アクリル絵具と油絵具を併用している。確かな画力にもとづく緻密な作風は説得力があり、非常に見応えがあった。関東在住の作家と聞いたが、今後も関西での発表を続けてほしい。

2016/06/13(月)(小吹隆文)

シリーズ・川崎の美術 樋口正一郎・井川惺亮展

会期:2016/04/09~2016/07/24

川崎市市民ミュージアム・アートギャラリー2・3[神奈川県]

折元とほぼ同世代、ともに1944年生まれの樋口と井川の展覧会。ふたりとも80年代に作品を見ていたが、どちらも枠に張らない布や木材に原色を塗ったような絵画というかインスタレーションだった。この「絵画というかインスタレーション」というのは80年代にけっこう流行ったスタイルで、フランスのシュポール/シュルファスの影響が色濃かったように思う(井川は南仏でクロード・ヴィアラに師事していた)。ところがその後、樋口はパブリックアートの制作および調査研究にのめり込み、井川は長崎大学に赴任して、作品をばったり見なくなってしまう。だから今回ふたりの作品を見るのはほぼ30年ぶりといっていい。なんだ、ぜんぜん変わってないじゃん、と思ったのは井川の80年代の旧作で、さすがに近作・新作はずいぶん変わった。ふたりとも基本的に画面が四角いタブローになった。樋口はパブリックアートも手がけているせいか材質も形態も多彩で、レリーフ状の作品もあるが、井川は画面に絵具を垂らしてクモの糸のように線を張り巡らせ、線と線のあいだにできた余白に色を置いていく、いわば塗り絵の手法で描いている。でも変わらないのはふたりとも原色を用いることと、具象形態を描かないこと。

2016/06/12(日)(村田真)