artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
第59回 表装・内装作品展
会期:2016/06/22~2016/06/27
東京都美術館[東京都]
画家の三杉レンジから震災に関連した作品を都美に出すといわれ、「巨大ドキュメンタリー絵画 現代の千人仏」とメモっといたんだが、会場に行ってもそれらしい展覧会はやってないし、案内の人に聞いてもわからない。ひょっとしたら公募展のなかでやってるのかもしれないと思い、無料の公募展を片っ端から見ていくと、意外にも「表装・内装作品展」の奥のほうで発見。なるほど、見れば納得できなくもなかった。三杉のやってる千人仏プロジェクトは、東日本大震災の仮設住宅で暮らす被災者に木炭で仏画を描いてもらい、千枚になるまで続けるという計画。これまで4年間で約930枚に達し、それを縦18×横52に「表装」したものを展示しているのだ。だから「表装・内装作品展」なのね。でもよく見ると、仏画を描いてもらうといってもみんな同じ位置に同じ大きさで描いてあるので、簡単な下描きの上に描いてもらってるみたい。なかにはその下描きを無視したり塗りつぶしたりする反逆児もいて、なかなか楽しめた。
2016/06/22(水)(村田真)
arflex×ミロコマチコ「けはいのねっこ」
会期:2016/06/16~2016/06/28
アルフレックス大阪[大阪府]
高級家具店のショールームで美術展。この手の企画はすでに手垢がついており、「何となく仕上がりが予想できるな~」と思いながら会場に向かった。で、実際にはどうだったかというと、これがもう予想をはるかに超える素晴らしいコラボレーション。家具の周囲にインテリアよろしく作品を並べました、なんてレベルではなく、ヘラジカを描いた巨大壁画を筆頭に、ゾウやクジラ、七面鳥(別の鳥かも?)など大作が目白押し。ペイントした椅子やモビールで飾り立てたコーナーがあるかと思えば、きちんと額装した作品を並べた壁面もあり、それらが上質なインテリアと美しく響き合っているではないか。ああ、なんてこった。知ったかぶりして斜に構えていたのが恥ずかしい。手垢が付いているのは、企画ではなく自分だった。
2016/06/20(月)(小吹隆文)
古代ギリシャ─時空を超えた旅─
会期:2016/06/21~2016/09/19
東京国立博物館[東京都]
史上最初にして最強の美を生み出した古代ギリシャの展覧会。なのにミロのヴィーナスもなければ、サモトラケのニケもない。もちろんパルテノン神殿を飾っていた大理石彫刻群も来てない。それらはみーんな列強が持っていってしまった。だから今回はギリシャ国内の美術館・博物館が所蔵する、残りものには福がある展覧会なのだ。構成は「古代ギリシャ世界のはじまり」から、「幾何学様式~アルカイック時代」「クラシック時代」「古代オリンピック」、そして「ヘレニズムとローマ」までの8章立て。初めのほうは壷や装身具のような小物や、ヘンリー・ムーアみたいな人物像が多くていささか退屈だが、やがてフレスコ画やモザイク画が現れ、壷絵もより精巧になり、華やかな金細工も増え、人物像も徐々にリアルになってくる。「古代オリンピック」に1章が割かれているのは、なぜいま東京で「古代ギリシャ」展が開かれるのかの答えになっている。つまり今年がオリンピックイヤーだからであり、東京が次の開催都市であるからだ。
2016/06/20(月)(村田真)
佐藤香菜展「透明な境界線」
会期:2016/05/27~2016/06/24
第一生命ギャラリー[東京都]
鹿、馬、ヤギなどの動物と植物のコラージュ的な組み合わせ。背景描写はほとんどないので日本画的でもある。ところどころ絵具をベッタリ塗ったり滴らせたり、あるいは花や身体の一部を刺繍で表現したり。と書いて、最近こういうの多いなあとあらためて思う。背景描写を省いた日本画的空間、全体に薄めで局所的に絵具をこってり盛り上げるテクスチャー、画面の一部に施される刺繍など。でもこれらをすべて盛り込んでる例は珍しい。工芸的になりそうなのにならないのはそのせいかも。
2016/06/20(月)(村田真)
プレビュー:辰野登恵子の軌跡─イメージの知覚化─
会期:2016/07/05~2016/09/19
BBプラザ美術館[兵庫県]
2014年に亡くなった画家、辰野登恵子の画業を振り返る回顧展が、神戸のBBプラザ美術館で開催される。関西在住の筆者は彼女の作品を見る機会が少なかった。個人的には、矩形がダイヤ状に連なる作品や、ゆるやかなS字(音楽記号のフォルテから横線を抜いた感じ)があざやかな色面を背景に浮遊する作品など、1980年代から90年代にかけての仕事が印象深い。また、筆者は格子やストライプを連続させた初期の版画作品も知っているが、ほかは見たことがなく、実体験が決定的に不足していた。作者の没後にようやく全体像が見られるのは皮肉だが、本展を逃すと関西で同様の機会はないかもしれないので、必ず出かけるつもりだ。
2016/06/20(月)(小吹隆文)