artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

Unveiling vol.1

会期:2016/06/03~2016/07/02

SNOW contemporary[東京都]

西麻布の交差点に移転して初の展覧会で、出品は飯沼英樹、日野之彦、SWOONら6人。SWOONは古くて小さな木の扉に、左右対称に切った白い紙を貼り付けた作品など2点を出している。いかにもストリートアーティストが売り物をつくりました的な小品ではあるけれど、のどから手が出そうになって退散。

2016/06/17(金)(村田真)

イラストレーター 安西水丸展

会期:2016/06/17~2016/07/10

美術館「えき」KYOTO[京都府]

イラスト、漫画、絵本、小説などの執筆、そしてテレビタレントとしても活躍した安西水丸。筆者が大学生だった1980年代はまさに絶頂期で、多くの紙媒体で彼の作品を目にした。なかでも小説家、村上春樹との一連の仕事はいまも印象深い。当時はイラストや漫画で「ヘタウマ」が流行っていたので、彼の絵もその系統だと思っていた。しかし今回、1970年代から2010年代までの作品を通観して、その印象が一変した。作品を子細に観察すると、クライアントや仕事の内容により、じつに細かく絵柄を使い分けているではないか。簡潔な線の美しさも相まって、「これぞプロのイラストレーターの仕事だ」と、大いに感心したのである。その意味で本展は、筆者と同年代の者だけでなく、プロのイラストレーターを志す若者にとっても見ておくべき展覧会と言えるだろう。

2016/06/16(木)(小吹隆文)

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ポンピドゥー・センター傑作展 ─ピカソ、マティス、デュシャンからリクエストまで─

会期:2016/06/11~2016/09/22

東京都美術館[東京都]

コレクションの対象となる1906年から開館の1977年まで、終戦の1945年をのぞいて、各年ごとに一作品を紹介する。日本の美術館とは異なり、建築やデザインの部門もあることから、当たり前のように建築のジャンルも入っているのだが、1923年の《オルリーの飛行船格納庫》の8分の建設映像が素晴らしい。確か『近代建築史図集』で覚えた建築だが、こんなに凄かったとは! アートはフランスを中心に組み立てたこともあり、アール・ブリュット系など知らない作家を学ぶことができた。展示のラストは、ゴードン・マッタ=クラークによる美術館建設に伴い、解体される建築に円をくり抜く作品からレンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースが設計したポンピドーセンターそのものへの流れだが、建築を説明するキャプションの文がよくない。これでは単に風変わりな建築としか伝わらない。

2016/06/15(水)(五十嵐太郎)

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丹野章回顧展 世界のバレエ

会期:2016/06/06~2016/06/25

ギャラリー新居東京[東京都]

丹野章は昨年8月に急逝した。写真家グループVIVO(1959~61年)のメンバーのなかでは最年長(1925年生まれ)だが、いつお会いしてもとても元気に見えたので、その突然の死には驚かされた。以後、その業績をふり返る展覧会や出版が相次いでいる。ギャラリー新居東京で開催された本展も、その一環として企画されたものだ。
「世界のバレエ」は丹野の初期の代表作で、日本大学芸術学部写真学科在学中から、来日した海外のバレエ団の公演に精力的に足を運んで撮影し続けた。ボリショイ・バレエ団、ニューヨークシティバレエ団、ロイヤル・バレエ団、ベルギー国立20世紀バレエ団、谷桃子バレエ団──特に一世を風靡したロシアの名プリマドンナ、マイヤ・プリセツカヤの「瀕死の白鳥」の舞台写真は貴重なものといえるだろう。
丹野はバレエの舞台を「完璧なフィクションの世界」でありながら、自分にとっては「もっともリアルな世界」であると考えていた。その二つの世界を行き来しつつ、「きわどくバランスを保った時間の断面」として捉えることこそ、彼が目指した舞台写真のあり方であり、それは今回展示された1952~72年の18点のオリジナルプリントにも見事にあらわれている。感度の低いモノクロームフィルムを使用しているにもかかわらず、そこにはバレリーナたちの息遣いや、彼らの肉体から発するオーラが写り込んでいるように見える。遺作の整理が進められていると聞くが、本作だけでなく、デビュー作の「日本のサーカス」(1953年)をはじめとする丹野の作品をまとめてみる機会を、できるだけ早くつくっていただきたいものだ。

2016/06/15(水)(飯沢耕太郎)

題府基之 何事もない穏やかな日です。

会期:2016/06/07~2016/06/24

ガーディアン・ガーデン[東京都]

題府基之は、東京ビジュアルアーツ専門学校を卒業した2007年に、第29回「ひとつぼ展」写真部門に入選して写真家デビューを果たした。家族との日常生活の断片を至近距離から撮影した写真群は、たしか同校の卒業制作だったはずだ。その後、彼の仕事は日本よりもむしろ欧米諸国で注目を集めるようになる。『Lovesodey』(Little Big Man Books, 2012)、『Project Family』(Dashwood Books, 2013)などの写真集を刊行し、現代日本写真の有力な作り手の一人とみなされるようになった。今回のガーディアン・ガーデンでの展示は、「ひとつぼ展」のグランプリ受賞を逃した写真家たちをフォローする「The Second Stage at GG」シリーズの第42弾として企画されている。
家族の日常スナップを、B全のペーパーに引き伸ばした26点が壁に連なる展示は圧巻であり、以前より明らかにスケールアップしている。だが、それだけではなく、家族一人一人のポートレート、食卓の上の眺め、近所の住宅の光景などを切り取り、圧縮して、再構築していく精度が格段に上がってきているように感じる。一見ラフな撮影の仕方に思えるが、見かけ以上に操作性の強い作品といえるだろう。とはいえ小綺麗にまとめあげるのではなく、ハイテンションを保ち続け、ノイズを排除することなく取り込んでいく力量を感じる。なんともとぼけた響きのタイトルは、住宅関係らしいポスターのロゴから借用している。テレビの画面に映っているのは、どうやらアメリカの大御所写真家のウィリアム・エグルストンのようだ。社会批評として理に落ちる寸前で、視覚的なエンターテインメントに方向をずらしていく綱渡りが、いまのところはうまくいっているのではないだろうか。
とはいえ、そろそろ「家族」の引力から離脱していく時期が近いのではと思う。どんな風に次の「プロジェクト」を展開していくのかが大きな課題になりつつある。なお、展覧会の会期に合わせるように、食卓の光景だけで構成した新しい写真集『STILL LIFE』(Newfave)が刊行されている。

2016/06/15(水)(飯沢耕太郎)

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