artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

MOTコレクション 戦後美術クローズアップ

会期:2015/07/18~2015/10/12

東京都現代美術館 常設展示室 1階、3階[東京都]

常設の「MOTコレクション 戦後美術クローズアップ」は、特に万博粉砕ブラックフェスティバルなど、1968~70年頃のベトナム反戦、沖縄闘争、反安保、反博系の美術運動に関する記録と映像が印象に残る。素材のセクションでは、全長20mもある遠藤利克の《泉》が、部屋いっぱいに横断していた。

2015/08/14(金)(五十嵐太郎)

おとなもこどもも考える ここはだれの場所?

会期:2015/07/18~2015/10/12

東京都現代美術館 企画展示室1F[東京都]

作品の改変要請問題で注目を集めた「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」展。ヨーガン レールは浜辺のゴミを再編集し、岡﨑乾二郎は美術を子どもに問い、アキリザンは家を縦に積む。会田誠は本人が展示室にいて、展示の一部と化す。ビン・ラディンに扮する昔の映像作品もよかったが、今回の鎖国を主張する日本首相もかなり笑える。

上=ヨーガン・レールの作品、中=アキリザンの作品、下=会田誠展示風景

2015/08/14(金)(五十嵐太郎)

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伊勢周平 個展「賽の一振り」

会期:2015/07/18~2015/08/22

タクロウソメヤコンテンポラリーアート[東京都]

カイカイキキから歩いて10分ほど、南麻布のTSCAへ。ネット上にも案内状にも休みとは書いてなかったが、ひょっとしたら盆休みで閉まってるかもと一抹の不安を抱きながら着くと、明かりは消えてるけどドアは開いてるので入ったら、奥から若者が出てきて「こんにちは」。こんな時期だれも来ないだろうけど、念のためバイトの留守番を置いたらしい。ともあれ明かりをつけて見せてもらう。いずれもジミーな色の絵具がペタペタ塗られたジミーな絵だが、まことに初々しい絵画だといっておこう。たとえば宣材にも使われてる《大リーグボール8号》。アンバー系に塗られた画面の中央に絵具が縦長に置かれ、そこから外に向かって放射状にペインティングナイフで削っている。たしかに縦長ではあるけれど高速ボールを正面から見たところに見えなくはないが、それよりナイフで削るときに裏の木枠が透けて二重枠になり、まるで後光の射すイコンのような聖性すら感じさせないでもない。おそらく「これを描こう」とか「こう描こう」と考えてつくったのではなく、描いてるうちに「こうなった」絵画ではないか。もうひとつ、右手と右足を描いた絵の隣に険しい山を描いた絵があって、言葉にするとまったく別物だが、絵にするとほとんど同じだったりする。つまり、なにか「もの」を描いているというより、「ただの絵」を描いているのだ。これほど楽しく、また難しいことはない。ちょっとほしくなってしまったが、プライスリストが見つからないため散財せずにすんだ。

2015/08/13(木)(村田真)

ZOER & VELVET展覧会「BLAS」

会期:2015/08/07~2015/08/29

カイカイキキギャラリー[東京都]

お盆の時期なのに開いている。さすが中小のギャラリーと違ってマネジメントがしっかりしてるなあ。ZoerとVelvetはフランスの若手グラフィティ・アーティストで、ギャラリーの壁3面にキャンバス布を張り、その上に描いている。高さ3メートル、全長20メートルくらいあるだろうか、ギャラリー史上最大の作品だそうで、1カ月間滞在しこの場で制作したという。タイトルの「BLAS」は“blasphemy(神への不敬、冒涜)”の略で、現在ヨーロッパで大きな問題になっている異教徒・異民族の移民・難民への差別といった社会問題をテーマにしたもの。地中海岸だろうか、海辺や難民キャンプのようなイメージをコラージュした風景が、軽快なタッチで描かれている。日本ではほとんど話題にならない社会的なテーマを取り上げるのも、たった1カ月でこれだけの超大作を仕上げるのも、グラフィティ・アーティストならではのこと。

2015/08/13(木)(村田真)

堤清二・辻井喬 ふたつの目 オマージュ展 Vol.2

会期:2015/07/26~2015/11/23

セゾン現代美術館[長野県]

セゾン現代美術館へ。堤清二・辻井喬 ふたつの目 オマージュ展で、こんなに多くの本を出していたことを知る。コレクションは80年代を強烈に思い出させる。いまなら福武のベネッセや森ビルなのだろうが、ただ収集するのではなく、辻井として自ら作品について文章も書き、アーティストとの共作も行なうあたりがすごい。今回の美術館訪問は、菊竹清訓の建築が目的ではなく、名古屋市美で見た若林奮展で、彼がここの庭で作品を手がけたのを知ったからだ。正門、鉄橋、コールテン鋼の斜面など、背後にヴォリュームを感じさせる表層をつくり出しながら、いずれも巧みなランドスケープをつくり出している。彼以外の野外彫刻もあるが、全体として箱根の彫刻の森に比べて、大人の空間だ。

2015/08/12(水)(五十嵐太郎)

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