artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
伊藤一洋 no one knows Sculpture
会期:2015/07/10~2015/08/09
hpgrpギャラリートウキョウ[東京都]
サイズもかたちも頭蓋骨か帽子を思わせるブロンズ彫刻が10点ほど。いや頭骸骨や帽子というより、その色と質感は背骨と肋骨を残した生物の遺骸に近いかもしれない。どっちにしろ内部が空洞のシェルター状になってるのが特徴だ。これを「天體」シリーズと呼んでいるのは、内部から見るとシェルターが天蓋に見えるからだろうか。不思議な魅力を持った作品。奥には人体の一部を思わせるブロンズの小品もあって、ちょっとそそられる。
2015/07/31(金)(村田真)
田中愛子 PAINTING Solo Exhibition
会期:2015/07/25~2015/08/21
THE TERMINAL KYOTO[京都府]
花や植物をモチーフにした半抽象画を制作する田中愛子。彼女のテーマは「絵画のここちよさ」を表現すること。モチーフは線と色彩に純化され、重なり合い響き合うことで不規則な揺らぎを放ち、「絵画のここちよさ」へと繋がっていく。田中は昨年に美大の大学院を修了したばかりの若手で、個展も3度しか経験していないが、今回大きなチャレンジを行なった。京都の繁華街・四条烏丸に程近い昭和7年築の京町家で大規模な個展を行なったのだ。作品数は絵画とドローイング合わせて18点。うち1点は約2メートル×約4メートルの大作で、他にも長辺2メートル超が1点、同1メートル超が2点あり、広大な屋敷の土間、床の間、板間に飾られていた。重厚な京町家に負けない作品を揃えてきたのは敢闘賞もので、今後の彼女の活躍が大いに期待される。
2015/07/28(火)(小吹隆文)
呉市立美術館
グレート・ザ・歌舞伎町写真展
会期:2015/07/25~2015/08/12
Bギャラリー/トーキョーカルチャートby ビームス[東京都]
何年か前から、「グレート・ザ・歌舞伎町」という真面目なのかふざけているのかよくわからない名前を、雑誌等で見かけるようになった。クリアーな切り口の、面白い写真が多いので気になっていたのだが、今回の展覧会でようやく彼が何者なのか、その全貌が見えてきた気がした。新宿・Bギャラリーでは、200点余りのプリントが壁にびっしり並び、原宿・トーキョーカルチャートby ビームスでは、大判プリントを中心の展示だった。それとともに、バイブルっぽい装丁の全432ページの写真集『グレート・ザ・歌舞伎町写真集』(デザイン・町口景)も刊行されている。
見ながら感嘆したのは、被写体をキャッチするアンテナの幅の広さと感度のよさ、そして抜群の行動力と編集能力だ。皇居の一般参賀、全身入れ墨の男女の集会、ネバダ州のイベント「バーニングマン」、ダライ・ラマ法王、反原発デモ、富士山、靖国神社、原発事故現場、北朝鮮のマスゲーム等々、次々に目の前で繰り広げられる場面を見ていると、現代社会のパノラマをめざましい速度で見せられている気分になってくる。「ワシが面白いと思った場所に行って、会いたいと思った人に会って、撮る」というストレートな思いが貫かれていて、「見たい」、「見せたい」という欲求が、空転することなく撮るエネルギーに転化しているのだ。
見ていて思い出したのは、篠山紀信の『晴れた日』(平凡社、1975年)である。篠山が1974年5月~10月に『アサヒグラフ』に連載したシリーズをまとめたこの写真集と同様に、「グレート・ザ・歌舞伎町」の作品からも、時代を見尽くしてやろうという疾走感が気持ちよく伝わってくる。雑誌メディアの勢いがなくなっているにもかかわらず、あえてプライヴェート・フォト・ジャーナリズムの原点回帰という難しい仕事にチャレンジしている心意気にワクワクさせられた。
2015/07/27(月)(飯沢耕太郎)
コレクション展 2015-II「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」
会期:2015/07/25~2015/10/18
広島市現代美術館[広島県]
広島現美の常設コレクションでは、「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」展を開催していた。展示されたアルフレッド・ジャーの作品名からとったタイトルだが、さらにもとをたどれば、大江健三郎の書名に基づく。さまざまな角度から広島/核/原爆と、現代美術の関係を検証する。若林奮の巨大彫刻《DOME》がなかなかの迫力だ。またイヴ・クラインの人拓は、原爆による人影の痕跡の影響を受けたらしい。
2015/07/26(日)(五十嵐太郎)