artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
赤鹿麻耶「ぴょんぴょんプロジェクト vol.1 Did you sleep well?」
会期:2015/06/05~2015/06/14
松の湯2階[東京都]
2011年度の「写真新世紀」でグランプリを受賞し、翌年ビジュアルアーツフォトアワード受賞作『風を食べる』(発売=赤々舎)を刊行した赤鹿麻耶が、新たなプロジェクトを始動した。
不穏な空気感を醸し出していた前作の勢いを受け継ぎつつ、「笑い」をともなったパフォーマンスの要素をより強化している。起点となる「イメージ」は、「誰しもが目にするモノや風景」からヒントを得ているという。たとえば「コンビニのソフトクリームだったり、おばさんのゴミ出しの様子だったり」なのだが、それをそのまま再現するのではなく、一ひねり半くらいねじって、過剰な身振りで身近な友人たちに演じさせる。同じ人物が何度か登場してくるので、もはや「赤鹿劇団」と呼びたくなるほどだ。
ただ、パフォーマンスの内容があまりにも支離滅裂なのと、着地点が曖昧なので、どうしてももどかしさがつきまとってしまう。『風を食べる』と比較すると、人物やモノをかなり近い距離でストロボを焚いて撮影しているものが多く、画面処理が単調なのも気になる。もう少しテーマ性、ストーリー性をくっきりと打ち出してもいいと思うし、中心場面から外れた場所で起こっている出来事も取り入れていく余裕もほしい。展示と同時に上映されていた無題の映像作品(コント風の場面がアトランダムにつながる)の方に、むしろ可能性を感じた。今のところ写真作品のメイキング的な扱いだが、こちらが主役になる形も考えられそうだ。
特筆すべきなのは会場設定のユニークさで、営業中の銭湯の2階スペースを、とてもうまく使いこなしていた。写真を床に敷き詰めたり、浴槽に浮かべたりするトリッキーなインスタレーションにまったく違和感がないのが、大阪出身の赤鹿の持ち味というべきだろう。なお、本展は4月24日~30日には大阪市生野区の「桃谷の空き地」で開催された。展示場所へのこだわりも、さらに突き詰めていってほしいものだ。
2015/06/12(金)(飯沢耕太郎)
水田寛「中断と再開」、新平誠洙「windows upset」
会期:2015/06/09~2015/07/18
ARTCOURT Gallery[大阪府]
ともに1980年代生まれで、京都市立芸術大学出身・在籍中の画家、水田寛と新平誠洙のダブル個展。両者の作品は複数のイメージがレイヤー状に重なる、あるいは混在する点で共通するが、作風はまるで異なる。水田が主観的な記憶や情景をモチーフとし、丸みを帯びた線描と色鮮やかな色彩を用いるのに対し、新平のイメージ処理は反射や透過など光学的で、色調もモノトーン主体だ。また、水田がキャンバスを縫い合わせることがあるのに対し、新平は複数のキャンバスによる組作品を得意としている。このように異なる個性を持つ2人の作品だが、自己の境界線に対する意識や、異なる時空を自在に操る姿勢には共通性が感じられる。それは、デジタル技術が発達し、高度にネットワーク化された社会で育った世代の原風景なのだろうか。純正アナログ世代の筆者には窺い知れない、しかし現在の空気感を率直に反映した表現が、そこにはあった。
2015/06/12(金)(小吹隆文)
門田光雅「色彩のドローイング」
会期:2015/05/15~2015/07/17
セゾンアートショップ[神奈川県]
みなとみらいのヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル(長すぎる)1階に、ミュージアムグッズを扱うお店がオープン。そこで個展を開いてるというから「どんなんかな?」と思ったら、空いた壁面(強引に空けたというべきか)に大小4、5点の絵を展示しているだけだった。でも以前より絵具のせめぎ合いが密になった門田の新作が見られたのでよかった。
2015/06/11(木)(村田真)
笛田亜希「Animaless Zoo Project INOKASHIRA」
会期:2015/06/09~2015/08/08
un petit GARAGE[東京都]
新橋演舞場近くのビルの駐車場(1台分)を改装したプチギャラリー。笛田は動物をよく描くが、それは武蔵野生まれが関係しているらしく、小さいころからしばしば井の頭動物園に通っていたからだそうだ。とくにゾウのはな子がお気に入りのようで、今回のメイン作品もはな子を描いたもの。よく観察していることは細部を見ればわかるが、とりわけ皮膚のテクスチュアが微に入り細を穿っていて、背景の描き方とは明らかに違うのだ。ほかにワラビー、野鳥のスケッチなど、動物愛にあふれた作品ばかり。
2015/06/10(水)(村田真)
リー・キット/李傑 展 The Voice Behind Me
会期:2015/06/02~2015/07/26
資生堂ギャラリー[東京都]
リー・キットは香港生まれ、台北を拠点に活動するアーティスト。もうこれだけで表現のモチベーションにこと欠くはずはないだろう、と思うのは平和ボケした日本人だけか。でも作品は絵画と既製品を組み合わせたり、映像と絵画を並べたりしたインスタレーションで、なんかピンと来ないというか、インパクトに欠けるなあ。
2015/06/10(水)(村田真)