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美術に関するレビュー/プレビュー

MOTコレクション特別企画 コレクション・ビカミング

会期:2015/01/24~2015/06/28

東京都現代美術館[東京都]

これまでトーキョーワンダーウォール公募入選作品展のタイミングで、あまり東京都現代美術館を訪れたことがなかったが、今回は初めて遭遇した。名古屋のアーツチャレンジ2015で選ばれた田中里奈がここでも入っているほか、片貝葉月による手づくり感あふれる痛ましい身体矯正マシーンの数々が印象的だった。また常設展では、コレクションとは何かを切り口にしており、絵画の裏側から読み取れる履歴の情報を見せるなど、普段は意識しない内容を楽しむことができた。

2015/06/07(日)(五十嵐太郎)

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山口小夜子──未来を着る人

会期:2015/04/11~2015/06/28

東京都現代美術館[東京都]

「山口小夜子──未来を着る人」展がよかった。70年代に日本から登場したミューズとしての活動と、モデル業以外のアートとの積極的な関わりを回顧するものだ。素顔や初期の写真・映像を見ると、意外に丸い目で、日本的なかわいらしさを感じさせる。一方、有名な切れ長を強調したメイクは、まさに海外から見た東洋の美女イメージであり、彼女は両者を横断していたことがわかる。

2015/06/07(日)(五十嵐太郎)

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他人の時間 TIME OF OTHERS

会期:2015/04/11~2015/06/28

東京都現代美術館[東京都]

日本、シンガポール、オーストラリアなどの複数の美術館が共同して企画し、作家のリサーチを踏まえた、まじめな内容になっている。が、ちょっと堅いというか、展覧会だからこその高揚感がもう少し欲しいかもしれない。もちろん、下道基行やブルース・クェックなど、各作家は「他人の時間」というテーマによく応えており、好感はもてる。

2015/06/07(日)(五十嵐太郎)

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マグリット展

会期:2015/03/25~2015/06/29

国立新美術館[東京都]

マグリットというと、シュルレアリスムのなかでも素人受けするイラストレーターみたいな位置づけで敬遠していたが、息子が見たいというのでついて行く。しかしこうしてまとめて見ると、そう捨てたもんでもないなあと思えてくるから不思議だ。例えば、巨大岩が宙に浮かんだ《現実の感覚》。かつてはトリッキーなイメージばかり問題にして不条理だとか陳腐だとか述べていたけど、どうでもいいような背景の空と雲の色彩に着目すると、青から水色に変わるグラデーションと藤色の雲の織りなす微妙なニュアンスが美しく感じられたりする。木に顔が生えてる《不思議の国のアリス》も、樹木の描写に見られる補色を隣り合わせに置いた点描風の描写は、エドモン・クロスやマクシミリアン・リュスの点描派の絵画を彷彿させる。そういえばベルギーは20世紀以降も点描技法を継承させた国のひとつだったっけ。図らずも色彩画家マグリットを発見してしまった。

2015/06/07(日)(村田真)

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鈴木崇「Form-Philia」

会期:2015/05/29~2015/07/12

IMA Gallery[東京都]

2014年8月~9月の「これからの写真」展(愛知県美術館)に出品された鈴木崇の「BAU」は、なかなか面白いシリーズだった。カラフルなスポンジを重ねて、さまざまな「構築物」を作るというコンセプトが鮮やかに決まっており、作品自体のサイズを小さめにしたのも成功していた。鈴木はアメリカのアート・インスティテュート・オブ・ボストンを卒業し、ドイツ・デュッセルドルフの芸術アカデミーではトーマス・ルフに学び、トーマス・シュトルートのアシスタントをするという華麗な経歴の持ち主だが、正統的な「ベッヒャー派」の作風からはやや逸脱した、軽やかで「カワイイ」たたずまいが、むしろ新鮮に感じられた。
その鈴木の新作を見ることができるというので、期待して個展の会場に足を運んだのだが、いささかがっかりさせられた。今回は「BAU」以外に、影をテーマにした「ARCA」、新作の「Fictum」のシリーズが展示されていたのだが、どちらも「悪くはない」レベルに留まっている。特に、京都を中心に日本の都市の光景を断片化して切り取り、3面~5面のマルチ・イメージとして並置した「Fictum」は、発想、仕上げともに既視感を拭えない。日本の都市環境を、瓦屋根のような伝統的な素材と近代的な素材とのアマルガム(混合物)として捉える視点が使い古されているだけでなく、その並置の仕方に工夫が感じられなかった。疑いなく、一級品の才能なのだから、それにさらに磨きをかけていってほしいものだ。

2015/06/07(日)(飯沢耕太郎)