artscapeレビュー
書籍・Webサイトに関するレビュー/プレビュー
レム・コールハース:ア・カインド・オブ・アーキテクト(DVD)
[東京都]
レム・コールハースのドキュメンタリー映像。生い立ちから最新作の《CCTV》や建築以外の活動までを網羅的に紹介。異常に密度が高く、細々としたエフェクトなど映像としての手数も多く、情報量の高さ自体がコールハース的。コールハースを知らない人には教科書にもなるし、知っている人にとってもマニアックでレアな映像が多い。きっと売れるDVD。実際、ジャーナリストの頃に関わった映像作品や、シチュアシオニストのコンスタント・ニーベンホイスへのインタビューに影響されたことなどはあまり知らず、勉強になった。普通の建築ドキュメント映像に比べて変わっているのは、動線にそって空間体験を追体験させるような常識的な紹介が、ベルリンの《オランダ大使館》以外にはないところ。コールハースを通常の建築家として扱えないことは、タイトルにも現われている(一種の建築家)。浅田彰はコールハースをメディア・アーキテクトといったが、それでいえば、ル・コルビュジエ、アンドレア・パラディオの系譜につらなる。ル・コルビュジエは自らと近代建築を、メディアを利用してプロモートしたし、パラディオは、アルベルティと違い、建築書ではじめて自作を紹介した建築家。 ところで、同じアップリンクから、もう一枚今年発売される予定のコールハースに関するDVD『ハウス・ライフ』は、《ボルドーの住宅》を舞台に、家政婦の視線でひとつの建物を延々と撮った映像。このスロープをジグザグに上がると簡単だとか、ぶつぶつと家政婦の文句があったりする。ひとつの建物だけをくどいくらい紹介するという意味で、『ア・カインド・オブ・アーキテクト』とは真逆の視線だが、やはりいわゆる建築的な紹介作品ではなく、アーティスティック。
2008/12/24(水)(五十嵐太郎)
『the travels n°01 Paris パリ』
発行所:エクスナレッジ
発行日:2008年12月12日
パリの建築ガイドブック。そもそも手持ちに手頃なサイズでここまで包括的なものもなかったと思う。建築の情報も詳しく、よく見ると電話番号やURLまで書いてある。また通常の建築ガイドと異なるのは、グルメ、ギャンブル、音楽の情報も付随しているところ。著者の一人、伊藤俊治氏によれば、大人が都市を楽しむためのガイドブックでもあるそう。書店で手に取っただけだと分からないかもしれないが、色違いのしおりが3本あり、カバーを外すとモレスキンの手帳のようにゴムバンドが現われるなど、使いやすさにも重点がおかれている。もちろん普通の地図と地下鉄マップもついているが、パリで実際に役に立つ通り名検索ができるのがよいところ。日本語の本では珍しい(ただし、すべての通り名ではない)。同シリーズで、今後さらに別の都市のガイドブックが出版されるという。
2008/12/12(金)(松田達)