artscapeレビュー
レム・コールハース:ア・カインド・オブ・アーキテクト(DVD)
2009年01月15日号
[東京都]
レム・コールハースのドキュメンタリー映像。生い立ちから最新作の《CCTV》や建築以外の活動までを網羅的に紹介。異常に密度が高く、細々としたエフェクトなど映像としての手数も多く、情報量の高さ自体がコールハース的。コールハースを知らない人には教科書にもなるし、知っている人にとってもマニアックでレアな映像が多い。きっと売れるDVD。実際、ジャーナリストの頃に関わった映像作品や、シチュアシオニストのコンスタント・ニーベンホイスへのインタビューに影響されたことなどはあまり知らず、勉強になった。普通の建築ドキュメント映像に比べて変わっているのは、動線にそって空間体験を追体験させるような常識的な紹介が、ベルリンの《オランダ大使館》以外にはないところ。コールハースを通常の建築家として扱えないことは、タイトルにも現われている(一種の建築家)。浅田彰はコールハースをメディア・アーキテクトといったが、それでいえば、ル・コルビュジエ、アンドレア・パラディオの系譜につらなる。ル・コルビュジエは自らと近代建築を、メディアを利用してプロモートしたし、パラディオは、アルベルティと違い、建築書ではじめて自作を紹介した建築家。 ところで、同じアップリンクから、もう一枚今年発売される予定のコールハースに関するDVD『ハウス・ライフ』は、《ボルドーの住宅》を舞台に、家政婦の視線でひとつの建物を延々と撮った映像。このスロープをジグザグに上がると簡単だとか、ぶつぶつと家政婦の文句があったりする。ひとつの建物だけをくどいくらい紹介するという意味で、『ア・カインド・オブ・アーキテクト』とは真逆の視線だが、やはりいわゆる建築的な紹介作品ではなく、アーティスティック。
2008/12/24(水)(五十嵐太郎)