artscapeレビュー

写真に関するレビュー/プレビュー

ゴー・ビトゥイーンズ こどもを通して見る世界

会期:2014/05/31~2014/08/31

森美術館[東京都]

展示の位置が少し低く、夏休みだから子供向けの企画と思いきや、内容は決してそうでもなく、むしろ子供をテーマにした美術展だった。社会派、政治的な作品もあり、ナッファール&サッロームのパレスチナの子供の現状とその夢をテーマにした映像「さあ、月へ」が良かった。





会場風景

2014/08/23(土)(五十嵐太郎)

これからの写真

会期:2014/08/01~2014/09/28

愛知県美術館[愛知県]

新井卓、加納俊輔、川内倫子、木村友紀、鈴木崇、鷹野隆大、田代一倫、田村友一郎。畠山直哉という本展の出品者の顔ぶれを見た時に、これで本当に「これからの写真」という展示が成立するのだろうかと疑問に思った。既に評価の高い写真家たちが多く、「これから」という未知の表現の可能性を提示できるとは思えなかったからだ。
だが、実際に愛知県美術館の会場に足を運んでみて、作家の人選、会場構成とも、とてもよく練り上げられた展覧会であると感じた。(キュレーションは同美術館学芸員の中村史子)。デジタル化とアート化の状況を踏まえつつ「写真を一面的な見方から解放する」という意図は、かなりうまく達成されていたのではないだろうか。従来の写真の見方は、「機械による記録か/芸術表現か」といった二分法的な思考に強く拘束されてきたのではないのかという問題意識に則り、本展ではその枠組みを解体/構築していくような作品が選ばれている。写真は「過去か/現在か」(新井卓)ではなく、「写真家か/被写体か」(鷹野隆大)でも、「二次元の作り物/三次元の現実」(加納俊輔)でも、「静止画/動画」(川内倫子)でもない。むしろその両方の極を行き来しつつ、それらの隙間から立ち上がってくるものなのだ。つまり「光源はいくつもある」。このキュレーションの視点は大いに共感できるものだった。
ところで、本展は思いがけない形で別な問題を孕むことになった。既に報道されている通り、鷹野隆大の出品作「おれと」の一部が、愛知県警から「わいせつ」ということで撤去するように警告を受け、結局作品を布で覆ったり、トレーシングペーパーをかぶせたりせざるを得なくなったのだ。要するに、展示作品における性器の露出に匿名の観客からクレームが寄せられ、それに警察当局が対応したということのようだ。むろん性器=わいせつという短絡的な考え方そのものがナンセンスだが、会場内に「全身ヌードを撮影した写真があり、鑑賞時、不快感を抱かれる方がおありかもしれません」という鑑賞者に充分配慮した表示があるにもかかわらず、このような事態に陥ったことに、強い憂慮を覚えないわけにはいかない。県警の介入に対する異議申し立ての動きも広がりつつある(http://www.change.org/p/愛知県警察本部-本部長-木岡保雅-殿-愛知県美-これからの写真-展-鷹野隆大さんの展示への不当介入の撤回)。事態の推移を見守っていきたい。

2014/08/21(木)(飯沢耕太郎)

新井卓「Exposed in a Hundred Suns」

会期:2014/07/25~2014/09/20

フォト・ギャラリー・インターナショナル[東京都]

愛知県美術館の「これからの写真」展の出品者の一人である新井卓は、同時期に東京・田町のフォト・ギャラリー・インターナショナルでも個展を開催した。展示作品はほぼ共通しており「百の太陽に灼かれて」と題して撮影された第五福竜丸関連のシリーズをはじめ、広島、長崎、福島などを巡って撮影されたダゲレオタイプ作品が並んでいた。
新井が世界最古の写真技法であるダゲレオタイプの作品に取り組みはじめたのは、2008年頃からなので、それから6年あまりが過ぎた。その間に、作品制作の姿勢は格段に深化し、作品そのもののクオリティとスケール感も増してきている。特に第五福竜丸や広島の原爆ドームなどを被写体として、数十枚~数百枚に達するダゲレオタイプをグリッド状に連ねた「多焦点モニュメント」の作品群の強度は恐るべきものだ。ダゲレオタイプの本質的な「遅さ」、煩雑な制作のプロセスと露光時間の長さを逆手にとって、眼前の光景をモニュメント化して屹立させようとする新井の試みは、それにふさわしい手法を編み出すことによって、一つの到達点に向かいつつあるのではないだろうか。
もう一つ注目したのは、会場の外の壁面にさりげなく展示してあった「毎日のダゲレオタイプ・プロジェクト 2011-2013」のシリーズである。おそらく東日本大震災を契機に開始されたと思われるダゲレオタイプによる日録は、「百の太陽に灼かれて」とはまた違った問題意識を孕みつつあるように思える。これはどうしてもモニュメンタルな一回性に回収されてしまいがちなダゲレオタイプ作品のこわばりを、もう一度日常性に解き放とうとする試みなのではないだろうか。

2014/08/21(木)(飯沢耕太郎)

プレビュー:Art trip vol.01 窓の外、恋の旅。──風景と表現

会期:2014/09/27~2014/11/30

芦屋市立美術博物館[兵庫県]

「風景」をテーマに、芦屋ゆかりの作家である小出楢重、吉原治良、村上三郎、ハナヤ勘兵衛、そして現在活躍中の下道基行、林勇気、ヤマガミユキヒロの作品を展覧。さらに、谷川俊太郎の詩を彼らの作品とともに展示する。絵画、写真、映像、詩をひとつの会場に並べることで、近代と現代の風景表現の変遷と差異、美術作品と詩の共鳴を味わいたい。

2014/08/20(水)(小吹隆文)

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プレビュー:米田知子 暗なきところで逢えれば

会期:2014/09/13~2014/11/03

姫路市立美術館[兵庫県]

一見ありふれた風景にしか見えない写真が、その土地が持つ歴史や記憶を付与された途端、まったく異なる意味合いを持って迫ってくる。米田知子の写真作品は、静かにして雄弁だ。彼女は兵庫県明石市出身だが、国際的に活動しているためか、関西で作品を見る機会は思いのほか少ない。それだけに、西日本で初の大規模展となる本展は貴重だ。近作を中心に、アジアの近代をテーマにした現在進行形の米田知子の仕事を紹介する。

2014/08/20(水)(小吹隆文)

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