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2014年11月15日号のレビュー/プレビュー

ヨコハマトリエンナーレ2014「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」

会期:2014/08/01~2014/11/03

新港ピア[神奈川県]

ヨコハマトリエンナーレの2週目として、新港ピアを訪れる。初回が内覧会で慌ただしい状況だったので、メルヴィン・モティの空っぽのエルミタージュ美術館における不在の絵画のツアー音声、アクラム・ザタリが友人の祖母の若き日のヌード写真を契機に当時の撮影者にたどりつき、歴史をほりおこす映像などの作品を見る時間がようやくとれた。


写真:やなぎみわ《演劇公演「日輪の翼」のための移動舞台車》2014(東北画の部分)

2014/10/26(日)(五十嵐太郎)

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BankART Life IV 東アジアの夢

会期:2014/08/01~2014/11/03

BankART Studio NYK[神奈川県]

会場間をつなぐバスでBankARTへ。あいちトリエンナーレではできなかったが、こうした無料シャトルバスの存在はありがたい。「東アジアの夢」を再び見る。これまでの企画展や海外交流など、BankARTの活動の集大成的な内容だ。あいちトリエンナーレに参加した山下拓也も展示壁を素材に作品を制作している。




山下拓也《L.A coHAMA OLYMPIC 14》2014


2014/10/26(日)(五十嵐太郎)

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自由が丘で

ホン・サンス監督『自由が丘で』を見る。加瀬亮が思いをよせる韓国人女性と再会するために、ソウルで過ごす日々。カフェ「自由が丘」、ゲストハウス、路地と坂道などの限定された場所で、反復する会話や人の配置。出来事を伝える手紙がばらばらになったために、時間がシャッフルし、様々な効果を生む。

2014/10/26(日)(五十嵐太郎)

レッド・ファミリー

映画『レッド・ファミリー』を見る。韓国/北朝鮮の政治状況でしか成立しえない、家族と国家がむきだしにせめぎあう戯画的な設定を決めた時点で、半分成功。そこにキム・ギドクのピエタにも通じる自己犠牲が重なり、クライマックスでの度肝を抜く演劇的反復を通じて、「家族」が完成する。お見事だ。

2014/10/26(日)(五十嵐太郎)

堀浩哉 展「起源」

会期:2014/10/18~2014/11/09

多摩美術大学美術館[東京都]

多摩美教授だった堀の退官記念展。最初の展示室は70年代のインスタレーションとパフォーマンスの再現(どちらの用語も当時まだ流通してなかったが)。床にぐしゃぐしゃにした新聞紙を敷き、壁には「REVOLUTION」という言葉を文章に挟んだ紙を貼り、その手前にグルッと木枠を立て、一部に白い布をかけている。そのなかで行なわれた堀ともうひとりのパフォーマンスの映像も流されていて、布を動かしながら「走れ!」「レボリューション!」「勇気!」「レボリューション!」「元気!」「レボリューション!」と掛け合いをやっていくのだが、これがナンセンス劇のようでおかしい。展示のほうは、高校3年のとき富山県展に出した油絵に始まり、多摩美闘争時代の《鑑賞を拒否する》、パフォーマンスの記録写真、3原色を用いた「プラクティス」シリーズを経て、80年ごろから始まる抽象表現主義的なタブローに移行していく。大作絵画は壁に1、2点だけ飾り、小品やドローイングは壁一面を埋め尽くすようにびっしり並べている。全体に簡潔で、説得力のある展示になっている……のだが、なにか足りない気がする。説得力があるのに足りないのではなく、むしろ説得力があるからこそウンウンとうなずいてしまい、そこになにか大切なものが抜け落ちてしまってる気がするのだ。高校時代は自分の描いた絵に納得できず、大学に入って「自己埋葬儀式」を行ない、闘争に身を投じたものの絵筆は折らず、絵画を解体して1から再構築し、やがてモネの晩年の絵に出会って描くことに没入していく……。展示を見ると、そんなひとりの画家の紆余曲折に満ちた歩みが、たった4室の小さな美術館のなかで30分ドラマのごとく完結してしまっているように見える。そこに違和感を覚えるのだ。しかも、そこが闘争で中退したものの30数年後に教授として迎えられた多摩美の退職記念展という場であってみれば、なおのこと「めでたしめでたし」で終わってはならないだろう。もっと大きな会場で、すべての作品を見てみたくなった。

2014/10/27(月)(村田真)

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