artscapeレビュー

2014年11月15日号のレビュー/プレビュー

東京ミッドタウンアワード2014 受賞作品展示

会期:2014/10/17~2014/11/09

東京ミッドタウン プラザB1[東京都]

アートとデザインの2部門からなるコンペ。アートはテーマなしで6点が受賞。おもしろかったのは、コンクリートブロックを積み重ねた小さな壁に雑草が生えた原田武の作品と、道端に停まってる車を後ろから撮った加藤立の写真。だが原田の作品は素材がコンクリートでも植物でもなく、すべて金属でつくってるところがつまらなかったし(本人はたぶん金属でつくらなければ意味がないと思ってるはずだが)、逆に加藤は自分の誕生日と同じナンバーの車ばかり撮って毎日入れ替えるという、意味のないところがおもしろかった。原田はグランプリ、加藤は準グランプリを獲得。デザインは「和える」というテーマの下、8点が受賞。これで肉や魚を焼くと和文様がつくhitoeの《和網》、レインコートを鎧風にデザインした85の《鎧カッパ》、ハーモニカ型の皮にアンコを包んだwunit design studioの《ハーモナカ》、割れたせんべいを金でつないだ泉美菜子の《金継ぎ煎餅》、果物に刺す楊枝の先に「大吉」とか「小吉」とか書いた土屋寛恭の《おみく枝》など、なるほどと思う佳作が多い。グランプリ、準グランプリは《和網》と《鎧カッパ》。アートとデザインを比べるのもなんだが、はっきりいってアートは低調だ。それは応募総数でも差がついたし(アート357点、デザイン1,072点)、観客の投票数にも表われている(10月28日現在、アートは最低564票、最高1,080票、平均727票に対し、デザインは最低953票、最高2,980票、平均1,703票を獲得)。アートはデザインより興味を持たれてないということだ。でもデザインのほうが発想がせこいぞ。

2014/10/28(火)(村田真)

あいちトリエンナーレ2016有識者部会、あいちトリエンナーレ実行委員会運営会議

会期:2014/10/29

愛知芸術文化センター[愛知県]

あいちトリエンナーレ2016の有識者部会と実行委員会の運営会議に出席した。港千尋芸術監督が、テーマ「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅/Home Faber : A Rainbow Caravan」とコンセプト、また人類が最初に使ったであろう土の黄色を用いたメインヴィジュアルを説明する。「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」は、一定の方向性を示しつつ、展覧会を構成しやすいテーマだと思う。空間/時間的にもっとも遠い宇宙への探査機と先史時代の洞窟に触れて、創造する人類の旅のイメージを打ちだしながら、芸術祭そのものをキャラヴァンサライ(旅の家)と定義する。また「虹」という比喩は、自然と人間、知性と感性のあいだをつなぐ諧調であり、また本来は同根のアルスだった芸術と技術を架橋するものだろう。そしてオペラやパフォーマンスも含むあいちトリエンナーレの特徴である多分野について、諸ジャンルが分化する以前の原初へとたち戻ろうとする試みになっている。

2014/10/29(水)(五十嵐太郎)

美術する身体 ピカソ、マティス、ウォーホル

会期:2014/09/20~2014/11/30

名古屋ボストン美術館[愛知県]

戦後のアメリカといえば、抽象絵画の興隆が想起されるが、ここでは具象絵画をとりあげ、人を描いた作品や版画に焦点をあてる。幾つかの版画の制作プロセスもていねいに展示しており、勉強になった。名前を失念したが、モノタイプの手法でさっと女性を描いた白黒の作品がとくに印象に残った。

2014/10/29(水)(五十嵐太郎)

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エレナ・トゥタッチコワ「林檎が木から落ちるとき、音が生まれる」

会期:2014/10/27~2014/11/08

Art Gallery M84[東京都]

エレナ・トゥタッチコワは1984年、モスクワに生まれ、現在は東京藝術大学大学院先端芸術表現科に在学中の新進写真家である。今年の夏、東川町国際写真フェスティバルの一環として開催された「赤レンガ公開ポートフォリオオーディション2014」でグランプリを受賞した。その受賞記念展として開催されたのが本展である。
被写体となっているのは、ダーチャと呼ばれるロシア人の伝統的な「夏の家」。夏の暑さと都会の喧噪を逃れて、郊外の家で過ごす習慣は、貴族たちの間で17~18世紀頃に始まったが、ソ連時代になると一般労働者も小さなダーチャを持つことができるようになった。森や川や湖などの自然環境に恵まれた場所で、ゆったりと時を過ごしながら、お喋りを楽しんだり、文学や音楽などにも親しんだりすることができるダーチャは、ロシア人の精神生活に大きな影響を与えてきた。ペレストロイカ以降の窮乏期には、ダーチャで育てた野菜や果物が生き延びる糧になったということもあったようだ。つまり、ダーチャほどロシア人の生に密着した場所は他にあまりないということだ。
エレナは、2007年頃から大学時代の先生のダーチャを中心に撮影しはじめた。それは、彼女自身のダーチャで過ごした子供時代の記憶、いままさに成長期にある女の子たちの日常、「永遠の夏」といいたくなるようなロシア特有の光と影のコントラスト、周囲の自然環境などが絡み合った、精妙な図柄のタペストリーとして形をとりつつある。「林檎が木から落ちるとき、音が生まれる」というタイトルは、「毎年、夏が終わろうとしている時、林檎が生まれる。子供たちが成長して大きくなる。そしてまた新しい人間が誕生する」という、自然と人間との深い結びつきを示している。まだこれから先、さらに成長して、よりスケールの大きな作品となっていく可能性を秘めたシリーズといえるだろう。

2014/10/31(金)(飯沢耕太郎)

プレビュー:大谷史乃 個展 「presence」

会期:2014/11/18~2014/11/23

KUNST ARZT[京都府]

京都市立芸術大学大学院修了、モノの認識についてのさまざまな作品をつくる大谷史乃。ウェブ上にあった旅行者による「金閣寺」スナップ写真を立体的につくった「5 scenes」なる作品は、ウェブ上で画像を見るだけでも興奮する。同じく過去に発表した、国宝の八橋蒔絵螺鈿硯箱の写真を短冊状に切って箱に編んだ作品というのもヤバそうだ。平静と狂気のようなものが見え隠れする感覚は、新作が楽しみ。

2014/10/31(金)(松永大地)

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