キュレーターズノート
バックナンバー
未来を放棄しないために、予め祝う12年目の春
[2023年03月01日号(清水チナツ)]
東北に暮らす者にとって、とりわけ3月は意味深い。それはいうまでもなく2011年の東日本大震災の記憶と結びついているからだ。あの日から間もなく12年が経過しようとしているが、あの災厄を語るとき、これまでの生活に変更を迫られるような経験であった...
「一見意味がないとされるもの」とも同じ場に集うこと──「ROUTINE RECORDS」での実践を通して
[2023年02月15日号(野中祐美子)]
金沢21世紀美術館には企画展やコレクション展を開催する展覧会ゾーンと、それらを囲むようなかたちで交流ゾーンと呼ばれるエリアがある。今回はこの交流ゾーンの中にあるデザインギャラリーでの取り組みを紹介したい。 デザインギャラリーは全面ガラス張り...
生活こそすべて。毎日何をしているかだけですもんな、人生は。──坂口恭平日記
[2023年02月15日号(坂本顕子)]
2009年、熊本市現代美術館のギャラリーⅢというスペースで「 坂口恭平 熊本0円ハウス 」という展示を行なった。当時、駆け出しの学芸員だった筆者は、坂口がメインフロアで個展を開催する未来をうまく想像できなかったが、そこから14年の月日を経て...
「コレクション」を考える(6)──宇都宮美術館の「これまで」と「これから」
[2023年02月01日号(志田康宏)]
本連載ではこれまでに、美術館に寄贈することが前提とされた個人コレクション、個人コレクションが公立美術館になった事例、美術館に入った個人コレクションを再パッケージ化した展覧会、開館50年を迎えた美術館の展覧会、そして新たに開館した美術館のコレ...
「合田佐和子 帰る途もつもりもない」を歩く──肉体から視覚へ
[2023年02月01日号(橘美貴)]
12月、高知県立美術館で開催されていた展覧会「 合田佐和子 帰る途もつもりもない 」(その後三鷹市美術ギャラリーに巡回、3月26日まで開催)を訪ねた。 伊村靖子氏らのレビュー で触れられているように、本展覧会では立体、絵画、舞台、写真、執筆...
開館3年目の応答──ウポポイの「現在」を伝えるために
[2023年01月15日号(立石信一)]
開館後、数十年経って振り返りの展示を行なっている博物館・美術館は、近年コロナ禍ということもあり、多くあるように思う。しかし、国立アイヌ民族博物館(以下、博物館)は、開館後3年目でこうしたアーカイブ系の展覧会を開催することとなった。こうした背...
新しい価値を生むインフラ?──「制作室」と共創をめぐる取り組み
[2023年01月15日号(谷竜一)]
京都芸術センターは、展覧会や公演といった作品発表の場であると同じかそれ以上に、新たな作品制作の場としての機能が重要だと考えられている。その中核事業のひとつが「 制作室 」の提供である。本題に入る前に、京都芸術センターの「制作室」の運営状況に...
県立博物館開館50周年記念展と県立美術館オープンへの準備──「美術館とは何か」をめぐる試行
[2022年12月15日号(赤井あずみ)]
6月のレポート以来、約半年ぶりの記事のためにパソコンに向かっているが、夏、秋は一瞬にして過ぎ去り、すでに季節は冬モード。鳥取では例年より1週間早い初雪が降り、慌てて衣替えやタイヤ交換など雪国ならではの冬支度を始めている。 さて、この6カ月で...
巡回展をつくる──「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」展
[2022年12月15日号(荒井保洋)]
はじめにまず、個人的な話をすれば、2015年に滋賀県立近代美術館に着任してから、4年強の休館を経て2021年6月に滋賀県立美術館としてリニューアルオープンするまで、キュレーターとしてのキャリアのほとんどを、休館した美術館での設計協議と再開館...