artscapeレビュー

『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』

2011年11月1日号

会期:2011/10/07

TOHOシネマズほか[全国]

近頃のハリウッド映画をみていると、日本や韓国、香港など、アジア映画をリメイクした作品やシリーズ物、しまいには既存のシリーズ物の前作にあたるといったものまで、安易な企画としか思えない作品が多い。CGを駆使した映像自体は原作や過去の作品に比べ見応えはあるものの、なぜかつまらない。集中力を切らさず退屈しない作品のほうが少ない。本作『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』も、1968年公開のSF映画『猿の惑星』の前話を描いたという。ちなみに「猿の惑星シリーズ」はティム・バートン監督のリメイク版『猿の惑星』(2001)まで、続編などを含め計7回制作されている。正直なところ、本作は半信半疑でみた映画だ。『猿の惑星』で主人公のテイラー隊長(チャールトン・ヘストン)が砂に埋もれた自由の女神を発見し絶叫するラストシーンを、その衝撃を超えるなにかがあるのだろうかと。答えは「なるほど」といったところ。ハリウッド映画だからと言われればそれまでだけど、観客に負担をかけない丁寧な説明(展開)、喜怒哀楽を見事に表わす猿たちの表情や動き(技術)、霊長類保護施設に入れられたシーザー(主人公の猿)がホースで水をかけられる場面のように『猿の惑星』を意識させる巧みな仕掛けなどなど、すんなり入り込み楽しめる作品となっている。ストーリー上では今作からオリジナルへとスムーズなドッキングをはたしたと言っていいだろう。ただ、1968年の作品では科学技術の急速な進歩に対する希望と不安が、2011年の作品では人間(理性と感性をもった猿たちを含め)や人間性への問いが主軸に据えられている。[金相美]

2011/10/10(月)(SYNK)