artscapeレビュー

昭和モダン 絵画と文学 1926~1936

2013年12月01日号

会期:2013/11/02~2013/12/29

兵庫県立美術館[兵庫県]

昭和最初の10年間に起こった文化のうち、絵画と文学に着目したのが本展だ。会場構成は、「プロレタリアの芸術」「新感覚・モダニズム」「文芸復興と日本的なもの」の3章からなり、第1章が圧倒的に面白い。絵画の岡本唐貴、柳瀬正夢ら、文学の小林多喜二、徳永直らの作品を通して、当時のプロレタリア運動の高揚がリアルに伝わるからだ。この熱狂ぶりを見ると、国家権力が非情な弾圧を加えた理由が理解できる。第2章では、絵画は古賀春江や川口軌外ら、文学は横光利一や川端康成らが見られる。彼らのアヴァンギャルドで洗練された表現は新興の美に溢れているが、熱量が第1章に及ばない。梅原龍三郎や安井曾太郎らが“日本的油絵”を模索した第3章に至っては、もはや老成というか、戦雲を前に安全地帯に退避したかのようだった。それにしても、わずか10年間にこれだけ凝縮した文化があったとは驚きだ。今後は昭和戦前期の見方を変えなければなるまい。

2013/11/02(土)(小吹隆文)

artscapeレビュー /relation/e_00023950.json l 10094039

2013年12月01日号の
artscapeレビュー