artscapeレビュー
Performing Arts Program / LOVERS
2016年08月01日号
会期:2016/07/09~2016/07/24
京都芸術センター[京都府]
古橋悌二(1960 1995)によるヴィデオ・インスタレーション。初公開は1994年の東京・代官山 HILLSIDE PLAZA。その後幾度か公開されてきたが、今回は京都芸術センターが取り組む、アーティスト・グループ、ダムタイプの活動を紹介するプロジェクト《KAC Performing Arts Program LOVERS》の一環として、修復、展示された。11m四方の真っ暗な空間、その壁面には中心に設置された数台のプロジェクターから裸体の男女の姿が映し出される。男女はそれぞれ、歩いたり、走ったり、立ち止まったりし、時には重なり合い、自身を抱き、腕を広げて天を仰ぐ。白いタイルの床面には天井のプロジェクターから「DO NOT CROSS THE LINE OR JUMP OVER」というメッセージが投影される。そして静かに響く音や声が空間に緊張感を与える。
この作品が制作された頃を思うと、映像技術の進歩には隔世の感がある。まさに、当時のアナログ技術による作品をどのように未来に引き継ぐかがこのプロジェクトのテーマでもあるという。しかし一方で、アナログ技術ゆえの緩さや曖昧さ、揺らぎはすでに作品の一部であり、それらなくしては独特の繊細さや脆さも表現されえないのかもしれない。作者である古橋は若くして惜しまれつつ亡くなったが、そのことがあらためて思い起こされた。[平光睦子]
2016/07/20(水)(SYNK)