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童画の国から─物語・子ども・夢 展ジャンル:美術、その他

2016年08月01日号

会期:2016/07/16~2016/09/04

目黒区美術館[東京都]

童画家・武井武雄(1894-1983)と初山滋(1897-1973)の作品に加えて、工業デザイナー・秋岡芳夫(1920-1997)が描いた童画作品が出品されている。学校が夏休みのこの時期、子供たちを対象とした絵本や童画の展覧会は多い。しかし、なぜこの3人なのかといえば、発端は秋岡芳夫だ。目黒区美術館では、2011年に目黒区ゆかりの工業デザイナー・秋岡芳夫の全貌を紹介する展覧会を開催し、その後「秋岡芳夫全集」と題する小企画で秋岡の多様な仕事をひとつひとつ掘り下げてきた。その秋岡の初期の仕事のひとつが童画である。秋岡が童画に関心を持ったのは、子供のころに愛読していた『コドモノクニ』がきっかけ。彼は心ひかれた画家たちとして、初山滋、本田庄太郎、岡本帰一、武井武雄の名前を挙げている。なかでも心酔していたのは初山滋。第二次世界大戦後、新聞に日本童画会発足の記事を見つけた秋岡は入会を申し込み、初山滋に師事して童画の勉強を始めた。初山は秋岡の結婚式に際して「神主役」をつとめたという。2013年には「童画」という言葉を生み出した武井武雄の作品を常設展示している「イルフ童画館」(長野県岡谷市)で、秋岡の童画作品の展覧会「デザイナー 秋岡芳夫の童画の世界」(2013/11/14~2014/01/27)が開催されている。そのような背景はあるが、もちろん展覧会は純粋に3人の童画の原画と物語世界を楽しめる構成になっている。第1章は武井武雄と初山滋の戦後作品。入口から左に進むと「物語」の世界、右に進むと「夢」の世界という視点で作品が並ぶ。第2章は童画のはじまりを武井・初山の原画、童画雑誌、装幀作品などによって振り返る展示。第3章は両者による版画作品。第4章は秋岡芳夫の童画だ。また読書コーナーには武井武雄・初山滋の本、童画雑誌の復刻版などが多数並んでおり、ふたりの作品世界にじっくり浸ることができる。


展示風景

2014年に目黒区美術館で紹介された秋岡の童画を見たとき、筆者はそこに初山滋の影響が密接に見て取れるものがあると記したが、本展で3人の作品を見て感じたのは秋岡の童画世界はどちらかといえば武井武雄に近いのではないかということだった。たしかに秋岡の作品には初山に似た筆致のものもあるが、初山の作品が透明水彩やペンによるなんとも形容しがたい不思議な色面と線とで構成されているのに対して、不透明水彩で描かれた秋岡の画は、武井武雄の描く輪郭線とやや説明的な画面構成に近いように思う。
東京都庭園美術館では、本展と会期をほぼ同じくして「こどもとファッション」をテーマとした展覧会が開催されており、武井、初山作品を含む童画が子供服を語る資料として出品されている。どちらも最寄り駅は目黒駅。合わせて訪れたい。[新川徳彦]

★──秋岡芳夫全集2──童画とこどもの世界展:artscapeレビュー

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2016/07/20(水)(SYNK)

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