artscapeレビュー

ダリ展

2016年08月01日号

会期:2016/07/01~2016/09/04

京都市美術館[京都府]

20世紀のシュルレアリスムを代表する芸術家サルバドール・ダリ。本展は、日本では2006年以来の大規模展であり、ガラ=サルバドール・ダリ財団(フィゲラス)、ダリ美術館(フロリダ)、国立ソフィア王妃芸術センター(マドリッド)の全面協力を得て、初期から晩年に至る約200点が集結している。いわば決定版というべき機会だ。なのに、展覧会を心から楽しめない自分がいる。どうしてだろう。ダリがいつの時代も器用に話題作をつくり続けてきたからか、タレントばりのセルフ・プロモーションが気に食わないのか、すでに何度も作品を見てきたので既視感があるのか。いずれにせよ、問題の本質はダリではなく、自分の思い込みにある。ピカソや岡本太郎などもそうだけど、メディアの露出が多い芸術家を、その影響抜きに評価するのは難しい。そんな筆者が本展で気に入ったのは、初期作品が並んだ第1章。そこには印象派や未来派の影響を受けた作品が並んでおり、若きダリが時代の流行を一生懸命学んだ形跡がうかがえる。「この人、本当はとても生真面目な人なのかな」。そんな気がしてダリを身近に感じたのだ。

2016/06/30(木)(小吹隆文)

artscapeレビュー /relation/e_00035822.json l 10125696

2016年08月01日号の
artscapeレビュー