artscapeレビュー
デトロイト美術館展 太西洋を渡ったヨーロッパの名画たち
2016年08月01日号
会期:2016/07/09~2016/09/25
大阪市立美術館[大阪府]
メトロポリタン美術館やボストン美術館と並ぶ、アメリカ屈指の美術館のひとつ、デトロイト美術館。同館が誇るコレクションから、近代ヨーロッパ絵画の名品52点を紹介しているのが本展だ。その内容は、「印象派」、「ポスト印象派」、「20世紀のドイツ絵画」、「20世紀のフランス絵画」の4章から成り、19世紀後半から20世紀前半のヨーロッパ美術の流れがコンパクトにまとめられている。ドガ、ルノワール、ゴッホ、セザンヌなど複数の作品が見られる作家も多く、特にピカソの7点は見応えがあった。……などと褒め言葉を書き連ねてみたが、筆者が興味をそそられたのはそこではない。デトロイト市が財政破綻し、コレクション売却の危機に見舞われた美術館が、そのコレクションで企画展をパッケージして海外に売り込み、延命を図った経緯のほうである。少子高齢化が進む日本でも、近い将来、財政破綻する自治体が次々に現われるだろう。そのとき、日本の美術館はどのように生き残りを図るのか。今から具体策を考えておいたほうがいと思う。
2016/07/08(金)(小吹隆文)