artscapeレビュー
古都祝奈良 ─時空を超えたアートの祭典─
2016年10月01日号
会期:2016/09/03~2016/10/23
東大寺、興福寺、春日大社、元興寺、大安寺、西大寺、唐招提寺、薬師寺、ならまち、ほか[奈良県]
「古都祝奈良(ことほぐなら)」は、日本、中国、韓国の3カ国で、文化による発展を目指す都市を各国1都市選定し、さまざまな文化プログラムを通じて交流を深める国家プロジェクト。今回は日本の奈良市、中国の寧波市、韓国の済州特別自治道が選ばれた。イベントは美術部門、舞台芸術部門、食部門から成るが、筆者が取材したのは、美術部門のうち8つの社寺で行なわれた作品展と、ならまち会場の一部だ。8つの社寺とアーティストのラインアップは、東大寺/蔡國強(中国)、春日大社/紫舟+チームラボ(日本)、興福寺/サハンド・ヘサミヤン(イラン)、元興寺/キムスージャ(韓国)、大安寺/川俣正(日本)、西大寺/アイシャ・エルクメン(トルコ)、唐招提寺/ダイアナ・アルハディド(シリア)、薬師寺/シルパ・グプタ(インド)である。アーティストの国籍がアジアを横断しているが、その背景には、かつて平城京がシルクロードの東の終着点だった歴史があるのだろう。作品では、巨大な木製の塔を建てた川俣正、寺院にふさわしい哲学的なオブジェを発表したキムスージャ、インタラクティブな映像作品の紫舟+チームラボ、龍の伝説と中東起源のユニコーンをクロスさせたダイアナ・アルハディド(シリア)など力作が多く、非常に見応えがあった。また、電車、バス、徒歩で比較的容易に会場間を移動でき、一部社寺の拝観料以外は無料で観覧できるのも嬉しいところだ。このイベントは初期の広報が不親切で、事前の周知が十分とは言い難かった。もっと丁寧な広報を早期から心がけていれば、きっと大きな話題を集めたであろう。展示が素晴らしかっただけに、その点だけが残念だ。なお、美術部門のディレクションとアーティスト選定を担当したのは北川フラムである。
2016/09/02(金)(小吹隆文)