artscapeレビュー

日輪の翼 大阪公演

2016年10月01日号

会期:2016/09/02~2016/09/04

名村造船所大阪工場跡地(クリエイティブセンター大阪)[大阪府]

台湾で作られたデコトラ調の移動舞台車を用いて、中上健次原作の野外劇『日輪の翼』を国内各地で上演してきたやなぎみわ。筆者は過去に移動舞台車とそこで行なわれたポールダンスのパフォーマンスを見たことがあるが、『日輪の翼』は初めてだった。会場は名村造船所大阪工場跡地。やなぎの演出は工場跡の広大なスペースを生かしたもので、約100メートルはあろうかという奥行を効果的に利用していた。特に闇にフェイドアウトしていくラストシーンは秀逸だった。また演劇と音楽とポールダンスをミックスした構成もユニークで、舞台公演でしか表現できない世界が確かに感じられた。ところで、野外公演のネックは天候だが、当日は序盤から中盤にかけて雨に見舞われた。傘は禁止だったので、観客はカッパ着用で耐えるのみ。しかし、後半になると雨がやみ、天候すら演出の一部だったのかと思わせる展開に。やなぎをはじめとする関係者一同の熱意が天に通じたのであろう。

2016/09/03(土)(小吹隆文)

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