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茶碗の中の宇宙 樂家─子相伝の芸術

2017年02月01日号

会期:2016/12/17~2017/02/12

京都国立近代美術館[京都府]

樂焼の茶碗で知られる樂家の歴史を、各代の茶碗でたどる展覧会。樂焼といえば初代長次郎の名は知っていたし、当代(15代)樂吉左衞門の作品は何度も見たことがある。しかし、ほかの代についてはまったくと言ってよいほど不勉強だった。本展を見て驚いたのは、代による作風の違いが思いのほか大きかったこと。樂家では初代や先代の踏襲を良しとせず、各代が独自の世界を追求してきた。本展ではそれを「不連続の連続」と呼んでいるが、なるほど確かにその通りだ。斬新な方向に振る代があったかと思えば、伝統に回帰する代もある。しかし、外見がいくら変化しようとも、核となる精神は微動だにしないのである。展示について述べると、照明の当て方が効果的で、小さな茶碗に気持ちを集中させることができた。会場全体に心地良い緊張感がみなぎっていたが、これも照明によるところが大である。展示構成は、全体の約2/3が歴代の作品、残る約1/3が当代の作品だった。筆者としては歴代の作品をもう少し多く見たかったが、このあたりは見る者によって評価が異なるだろう。

2016/12/24(土)(小吹隆文)

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