artscapeレビュー
アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国
2017年02月01日号
会期:2017/01/11~2017/02/26
兵庫県立美術館[兵庫県]
アドルフ・ヴェルフリ(1864~1930)は、アール・ブリュットを代表する作家であり、ジャン・デュビュッフェがアール・ブリュットという概念を提唱するきっかけとなった作家の一人でもある。彼は精神病院で全45冊・25,000ページにおよぶ膨大な物語を綴った。それらは絵、文字、楽譜などで構成されており、本展では彼の最上級の作品74点を見ることができる。その感想を一言で述べると、やはり「圧巻」の一言。妄想的イマジネーションによるディープな物語世界が、凄まじい強度と執拗さで展開されており、画面を埋め尽くす図柄、文字、楽譜から目が離せなくなる。一方、彼の作品にはある種の中毒性があり、没入するのは危険だとも思った。現在日本では、アール・ブリュットを単に障害者アートとして取り上げることが多い。そこでしばしば語られるのはSMAPの楽曲『世界に一つだけの花』的な心あたたまる世界だが、そんな価値観を持つ人にこそ、本展を見てもらいたい。アール・ブリュット(生の芸術)とは本来どういうものかが分かるはずだ。
2017/01/11(水)(小吹隆文)