artscapeレビュー
風と水の彫刻家 新宮晋の宇宙船
2017年04月01日号
会期:2017/03/18~2017/05/07
兵庫県立美術館[兵庫県]
兵庫県三田市にアトリエを構えるベテラン作家、新宮晋(1937~)は、風や水などの自然エネルギーを受けて動く彫刻作品で国際的に知られている。彼は東京藝術大学を卒業したあとに渡ったイタリア(1960~66)で、風で動く作品の魅力に気付いたという。その後世界各国の公共空間などに約160点の作品を設置している。また、欧米の諸都市を巡る野外彫刻展「ウインドサーカス」や、作品設置を通して世界各地の少数民族と交流する「ウインドキャラバン」など、アートプロジェクトにも熱心に取り組んできた。本展では美術館をひとつの宇宙船に見立てて、18点の作品を展示している。また、過去のプロジェクトの紹介や模型の展示も行なわれた。空調の風や微弱な対流を受けて動く作品はとても優雅で、時が経つのを忘れて作品に見入ってしまう。また、館内に専用のプールを設けて設置した水で動く作品も、予測のつかない動きと光の反射が美しかった。本展の会場、兵庫県立美術館は、安藤忠雄が設計したことで知られている。その巨大な空間は時としてアーティストや学芸員を悩ませるが、本展の展示構成は本当に見事だった。安藤も喜んでいるだろう。
2017/03/17(金)(小吹隆文)