artscapeレビュー
ウィリアム・モリス 原風景でたどるデザインの軌跡
2017年04月01日号
会期:2017/02/25~2017/03/26
福井市美術館(アートラボふくい)[福井県]
「近代デザインの父」と言われるウィリアム・モリス。彼のデザインは日本でも親しまれ、150年以上を経た今でも人々の生活のなかで生き続けている。本展はそのモリスのデザインとともに彼を育み彼が愛した英国の風景を、写真家 織作峰子が撮影した写真を通して味わう展覧会。写真や映像のほか、テキスタイル、壁紙、椅子、刊本などおよそ100点が出品されている。
モリスが学生時代を過ごしたオックスフォード、結婚して構えた「レッド・ハウス」、画家ロセッティと共同で借りた「ケルムスコット・マナー」、工房を開設したマートン・アビー、モリスのデザインを生み出した場所は何処もまるで楽園のようで、木々や花々、小鳥や小動物に囲まれた静かで美しい場所ばかりである。確かに、この世界には荘厳で古典的な装飾よりも素朴でシンプルなデザインが似付かわしく、化学染料による機械捺染よりも天然染料を使ったブロックプリントが相応しい。本展での収穫は、あたかも英国の現地に足を踏み入れたかのような臨場感を味わえたこと、そしてモリスのデザインにおける信条を素直に理解できたことであった。[平光睦子]
2017/03/02(木)(SYNK)