artscapeレビュー
林勇気「私は猫を猫として認識する」
2017年12月01日号
会期:2017/11/17~2017/12/03
Gallery PARC[京都府]
自分や他者が撮影した膨大な写真をデジタル化し、それらを切り抜く、重ね合わせるなどした映像作品で知られる林勇気。彼が今個展でテーマにしたのはAI(人工知能)の普及により今後変容を迫られる「像」のあり方や、人間とAIの関係である。ちなみに謎めいた展覧会名は、2012年にグーグル社が開発したAIが約1000万枚の画像を見続け、人から教えられることなく猫を猫として認識したエピソードに基づいている。肝心の出展作品は、グーグルで検索した猫以外の動物の画像を、AIが組み込まれたプログラムによって猫化させる《Chimera》、展覧会DMに使用した猫の画像を数値化し、膨大な文字コードが集積した平面作品に変換した《times-cat》、「猫」で検索して出てきた猫以外の画像を分解して画面上に浮遊させ、それらが徐々に集積して最後は画面を埋め尽くしてしまう《IMAGE DATA-A to Z》(画像)など4点。AIの進化はこれから本格化するので、本展の作品が未来を予見しているとは言い難い。しかし、今日的なテーマに取り組み、可能性の一端を見せてくれたのは確かだ。先駆的な一例として、本展は評価に値する。
2017/11/17(金)(小吹隆文)